連続講演会「日本国憲法と裁判官」
山口毅彦さん
園田秀樹さん   山口忍さん   東條宏さん   矢崎正彦さん
虎井寧夫さん   堀内信明さん   喜多村治雄さん   浅田登美子さん   下澤悦夫さん
丹羽日出夫さん   和田忠義さん   小林克美さん   安倍晴彦さん   北澤貞男さん
伊東武是さん   安原浩さん   宮本康昭さん   鈴木經夫さん   福島重雄さん
花田政道さん   井垣敏生さん   大石貢二さん   石松竹雄さん   守屋克彦さん
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    「裁判官の職権の独立」を守る − 山口毅彦さんの講演
開催日:2010年3月9日 場所:東京
 裁判官の青法協への参加が「問題視」された時期、最高裁は若手裁判官が研鑽を積むためとして様々な施策を講じました。山口さんは、裁判官が単独で担当する裁判に若手を立ち合わせ、判決の下書きをさせる参与判事補制度は裁判官の職権の独立を犯すものだと異議を唱えた当時のことを語られました。
山口さんは、政府の人事院勧告無視に抗議のストをした公務員労働者への処分を取り消す判決に関わった経験もお話しされました。また、裁判官育成の観点からも本来の趣旨に適うよう法科大学院制度を改革する課題も提起されました。
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    『戦後裁判官物語』を綴る − 梶村太市さんの講演
開催日:2010年3月9日 場所:東京
 梶村さんは、裁判官としての経験をふまえて大河小説『戦後裁判官物語(全10巻)』を執筆する構想とその内容をお話しされました。それは、戦後司法改革物語、青法協物語、民事裁判官物語、刑事裁判間物語、家事裁判官物語、少年裁判官物語、法科大学院物語、最高裁物語、裁判官発掘物語、A級戦犯物語、という壮大で魅力的なものです。刊行が楽しみです。
梶村さんは、戦後の裁判官と裁判所をめぐる激動とその教訓を広く後世に伝えながら、真の司法改革を展望していきたいと元気いっぱいに語られました。
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    徳島ラジオ商殺し事件から学ぶ − 山田真也さんの講演
開催日:2010年2月4日 場所:東京
日本で初めて、有罪判決が確定した被告人が死亡した後に再審で無罪になった徳島ラジオ商殺し事件。再審裁判の裁判長として故・冨士茂子さんに無罪判決を言い渡した山田さんは、この事件の内容、警察の捜査の問題点、起訴した検察官や有罪判決に関わった裁判官をめぐる問題状況を語られました。
山田さんは故・冨士茂子さんやご遺族の苦しみ・怒りも紹介しながら、裁判所は反省しなければならないと力説されました。その振り絞るような訴えに、参加者は裁判の難しさや裁判官の良心などについて考えさせられることになりました。
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    冤罪が生まれる背景を考える − 有満俊昭さんの講演
開催日:2010年2月4日 場所:東京
ずっと冤罪事件に関心を持ってこられた有満さんは、裁判官の目から刑事裁判をめぐる問題状況を分析されました。冤罪事件が生じる背景として、(1)捜査構造の問題、(2)審理上の問題(裁判官の姿勢)、(3)犯人視報道の問題、(4)再審裁判の困難性、などを指摘し改善・改革が必要と述べられました。裁判員制度については、深く吟味されるべき、制度の趣旨や手続き上の問題点を明らかにされました。
有満さんは自ら直接関わった裁判の例なども紹介されました。多くの参加者が、誠実に、そして憲法の理念をふまえて仕事をされてきた裁判官の姿に接することになりました。
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    「裁判官における失敗」・「裁判官の良心」 − 石塚章夫さんの講演
開催日:2010年1月18日 場所:東京
石塚さんは、裁判も「誤る」ということを、足利事件を例に参加者に示しました。そして、「裁判における失敗」を捜査官側、弁護側、学者、裁判官がどのように検証しているのかを解明しつつ、「失敗」を克服する視点を問題提起しました。
そして、時に国家権力というものに直接的に対峙する判決を書くことになる裁判官は、その良心にのっとって仕事をすべきことを、また、最高裁判所の裁判官「統制」はその点からも見直されるべきことを訴えました。ご自身の経験やある裁判官の自死を紹介しながらのお話は参加者の胸に深く突き刺さるものでした。
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    刑事裁判における量刑のあり方を考える − 須藤繁さんの講演
開催日:2010年1月18日 場所:東京
“弱いものを思いやる”“時流に媚びたり、上に諂(へつら)わない”。良心とはこういうことではないか。裁判官をしながら須藤さんが考えたことです。
須藤さんは裁判官から弁護士になってからの経験も紹介しながら、刑事裁判における量刑の問題について語られました。刑事被告人の多くは罪を認めていて、量刑がどうなるかに関心を持っています。ところが、弁護人は事実認定のことでは一所懸命になっても量刑にはあまり執着しないところがあり、裁判所でも量刑のあり方はあまり検証されていないということです。裁判員制度が始まる中で、重要課題を提起していただきました。
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    「人間の尊厳」を基礎に判断する − 園田秀樹さんの講演
開催日:2009年12月3日 場所:東京
 裁判の多くは貸金の返還、土地建物の明渡し、交通事故などによる損害賠償、離婚などの民事事件です。園田さんはこれらについての民事裁判のあり方を問題提起されました。それは、裁判官の判断の当事者への影響の大きさを自覚し、当事者の気持ちにも十分に留意して裁判をおこなう重要性を説くものでした。そしてその判断の基礎に「人間の尊厳」(憲法13条)が置かれるべきだと訴えました。
裁判官の数が足りず、あるべき裁判が阻まれる現状を指摘しつつ、その中でも誠実に裁判官としての仕事に携わってきたことを語る園田さんの姿に多くの参加者が感銘を受けました。
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    「裁判官の独立」を守る − 山口忍さんの講演
開催日:2009年12月3日 場所:東京
 裁判官には誰からの指図も受けることなく、事実と法律に向き合い判決を下すことが要請されます。ところが、1960年代後半、青法協会に加入する裁判官は偏向しているとのキャンペーンがはられ、最高裁判所も青法協に加入する裁判官への不当な仕打ちをすることになり、「裁判官の独立」が脅かされることになりました。山口さんはこれらに毅然と立ち向かいました。
かつて多くの裁判官たちがその使命を自覚し気概を持って仕事をしていたことや自身が担当する裁判に真剣に向き合ってきたというお話に、参加者は裁判官としての矜持を学ぶことになりました。
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    当事者の訴えに真摯に向き合う − 東條宏さんの講演
開催日:2009年11月18日 場所:東京
 本来、被疑者の取調べは警察の留置場(代用監獄)ではなく拘置所で行われるべきです。東條さんは判事補の時にその当然のことを主張しましたが、その雑誌記事の内容をめぐって他の判事補とともに警察から告訴されました。当時は多くの判事補が加入した青法協の活動が「問題視」されていた時期で、この告訴事件もその流れの中にあったと思われます。
東條さんはその経過をふりかえりながら、その後憲法の理念を大事に、裁判の当事者の訴えに真摯に向き合い裁判にあたってきたことを語られました。多くの参加者が東條さんの誠実さと気骨に感銘を受けることになりました。
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    「良心は実践しなければならない」 − 矢崎正彦さんの講演
開催日:2009年11月18日 場所:東京
 矢崎さんは、「良心は実践しなければならない」との思いから、国民・労働者の権利を擁護し、無辜は罰せず、「非行」少年の更生を願い、様々な裁判を担当してきたことを語られました。そして、裁判官は護民官であり、人権と正義のための仕事をしなければならないと述べました。
「司法の危機」の中で、全国の裁判官は全国裁判官懇話会の場で交流し、励まし合うことになりました。矢崎さんの裁判官生活はこれに支えられたとのことです。矢崎さんは、憲法が染め上げられた風呂敷や憲法の歌の本を持参され、憲法への思いも語ってくださいました。それは、人間味あふれる裁判官の姿でした。
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    公平な事実認定による刑事裁判へ − 虎井寧夫さんの講演
開催日:2009年10月21日 場所:東京
 日本では起訴された事件の99%が有罪になっています。虎井さんは、その結果、裁判官の中に検察官・警察官に対する一定の信頼感が形成され、裁判官が無罪判決を出すことへの抵抗感を覚え、被告人に対する評価が下がる、などの状況が生まれているのではないかと分析されました。そして、こうした状況の中で、裁判官は、不自然・不合理でない「動かない事実」に依拠して審理すべきとの問題提起をされました。また、そのような観点から裁判員裁判への市民の参加への期待も表明されました。
刑事裁判における事実認定のあり方を考えさせてくれるお話でした。
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    「無辜の不処罰」を! − 堀内信明さんの講演
開催日:2009年10月21日 場所:東京
 ほとんどの刑事裁判で被告人は有罪判決を言い渡されます。ところが、長年刑事裁判に携わってきた堀内さんは、様々な裁判で被告人を無罪にしてきました。事実と法律に則ってたんたんと裁判に携わってきた結果のようです。
堀内さんはまったく気負いのない語り口で裁判の経過を紹介してくださいましたが、刑事裁判官の役割として「無辜の不処罰」などを挙げ、そのためには「少し被告人の側に傾いたピサの斜塔」のような姿勢が重要であるとも述べられました。また、取調べの可視化、代用監獄制度や鑑定のあり方の見直しの必要性も指摘されました。
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    裁判所の民主化 − 喜多村治雄さんの講演
開催日:2009年9月9日 場所:東京
 世界の歴史の中で民主主義という考え方が広がり、日本国憲法の制定によって、司法行政についても多数の裁判官の意思が反映されるべきことになりました。喜多村さんのお話は裁判所における民主主義をめぐる基本的な考え方とその歴史から始まりました。
お話はご自身が判事補だった時期に大阪の裁判所の民主化をすすめた経験へとすすみました。喜多村さん達の判事補会は全裁判官が参加する裁判官会議の活性化を求めて活発な活動を展開し、上席判事の選挙制を提案することになりました。最終的にそれは実現しませんでしたが、喜多村さんのお話から、若い裁判官達の活動と当時の裁判所の雰囲気を語り継ぎ、裁判所の民主化を追求していく必要性を学ぶことになりました。
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    裁判所におけるジェンダーバイアス − 浅田登美子さんの講演
開催日:2009年9月9日 場所:東京
 浅田さんが裁判官になる頃、女性の裁判官は裁判所からあまり好まれず、裁判官になっても家庭裁判所勤務が多く、ほとんど管理職にもなれませんでした。こんにち女性の裁判官とその管理職も増えてきました。浅田さんのお話は、女性が裁判所の中で正当に評価されていなかった頃の様子をリアルに紹介しつつ、女性の裁判官もより能力を発揮できるようにしてきた、様々な場での努力の経過を明らかにするものでした。
浅田さんは、小学生のときに憲法講話を聞き、両性の平等を新鮮に感じたこと、松川事件を知り、真実解明のために手弁当で働く弁護士に感銘を受けたこと、などについてもお話されました。スマートでいて、しかし芯の強さを感じさせる講演でした。
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    憲法9条と裁判官 − 下澤悦夫さんの講演
開催日:2009年9月8日 場所:名古屋
 戦後まもなく自衛隊が創設され、それを憲法9条違反とする判決もありましたが、いまなお自衛隊は存続・拡大しています。下澤さんは戦後の自衛隊をめぐる裁判を振り返りながら、この状態は法治主義という考え方を広げていく上でも重大な問題であると警鐘を発しました。
下澤さんはこのことに関連して、裁判所の中で“物言わぬ裁判官”づくりがすすめられた経緯を明らかにしつつ、憲法を守ろうとする裁判官団体の活動を積極的にすすめたことと今般の司法改革の課題について述べました。下澤さんのキッパリとした語り口に多くの参加者が励まされました。
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    知的能力+こだわりのない目+法尊重主義 − 丹羽日出夫さんの講演
開催日:2009年9月8日 場所:名古屋
 丹羽さんは、自分の言葉で考える力をつけること、そして予断や偏見を排し、こだわりのない目で物事を見ること、法に則り違憲判決・無罪判決にも躊躇しないこと、これらが裁判官には求められること、それは重要だが決して簡単なことではないこと、現在の裁判所の中でもそれが貫徹できていない現状とその背景、などについてわかりやすい具体例をあげながら解明されました。
ご自身が出した違憲判決・無罪判決も示しながらの丹羽さんのお話は国民の人権擁護への強い信念と熱い思い、そして丹羽さんの人間味に満ち溢れ、多くの参加者の心が揺さぶられました。
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    国民の裁判を受ける権利、裁判官の良心 − 和田忠義さんの講演
開催日:2009年8月28日 場所:大阪
 和田さんのお話はアジア太平洋戦争末期にお兄さんが戦死されたことから始まりました。社会全体が戦争に突入していった当時を振り返りながら、憲法を守る立場を語られました。
昭和40年代半ば頃、大阪の裁判所では、裁判所のあり方や司法権の独立について裁判所全体で活発な議論が行われました。和田さん達の判事補会も積極的な発言を繰り返しました。その様子ととりくみについての和田さんのお話から、参加者は、国民の裁判を受ける権利、裁判官の良心をふまえた裁判と司法のあり方について考えさせられることになりました。
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    裁判所の現状と改革課題・取り組み − 小林克美さんの講演
開催日:2009年8月28日 場所:大阪
 小林さんのお話は日本の裁判所の現状・問題点を抉り、その解決に向けたとりくみの経験についてでした。裁判所が受ける事件が増えているが裁判官がほとんど増えていないこと、日本の裁判官の数は諸外国と比較しても少ないこと、裁判官が憲法と国民の立場に立った役割を果たしきれていないこと、などをあげながら、ご自身が裁判にあたって心がけていることや日本裁判官ネットワークの設立と活動にたずさわってきた経験と思いを語っていただきました。
その精力的なとりくみと思いを熱意を持って語る小林さんのお話に参加者は深い感銘を受けることになりました。
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    仲間や地域の人々とともに − 安倍晴彦さんの講演
開催日:2009年8月4日 場所:東京
 アジア太平洋戦争の際、安倍さんは飢えと寒さに苛まれ、空襲などで親族や隣人の死に直面しました。その後平和憲法が制定されたことに深い感動を覚えた安倍さんは、学生時代には、病とたたかいながら、貧困な生活を余儀なくされた地域の人々をサポートするセツルメント活動にたずさわり、「憲法、平和と民主主義」への想いを深め、そして仲間とともに活動する重要性を学んでいくことになりました。
裁判官になった安倍さんの任地は家庭裁判所や地方裁判所の支部ばかりでしたが、裁判官の仲間、そして職員や地域の人々とともに歩まれた姿に参加者は感銘を受けることになりました。
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    これからの法律家と市民に期待 − 北澤貞男さんの講演
開催日:2009年8月4日 場所:東京
 北澤さんは、こんにちの裁判官には、日本国憲法の基本原理を実践しようとする裁判官とそうではない裁判官、そしてその中間層の裁判官がいるということ、残念ながらこれまで憲法を擁護しようという裁判官が裁判所の中で優位になったことはないが、その裁判官たちの努力と功績は大変重要であることを、ご自身の経験に照らして具体的に明らかにされました。
北澤さんは現在弁護士としてたずさわっている東京大空襲訴訟を例に平和憲法に忠実でない日本政府の問題点も語られ、また今次の司法改革の不十分さを指摘され、最後にこれからの法律家と市民への期待を語られました。
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    「自白強要の刑事司法からの脱却」 − 伊東武是さんの講演
開催日:2009年7月20日 場所:大阪
 伊東さんは2009年5月に定年退官するまで、主に刑事裁判を担当してきました。
伊東さんは、刑事事件においては被疑者の自白を引き出すことが大事にされていることとその理由、ただし自白をとるための取調べが過酷になっていること、自白調書を裁判の調書にするには自白の任意性が検証されなければならないが不十分であること、したがって取調べの可視化(録画・録音)が求められること、などについて、論理的に、かつご自身の経験もふまえて語っていただきました。そして、裁判員制度が「自白強要の刑事司法からの脱却」につながることへの期待も表明されました。
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    「えん罪の原因を探る」 − 安原浩さんの講演
開催日:2009年7月20日 場所:大阪
 主に刑事裁判を担当してきた安原さんは「えん罪の原因を探る」というテーマでお話していただきました。
安原さんは冒頭、裁判員制度を導入し発展させるべきとの立場を表明されました。そして四大再審事件(免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件)一つひとつを分析し、こんにちの刑事裁判の構造的問題点を解明しながら、その理由を説明されました。それは、裁判官が自白調書を鵜呑みにしてしまいがちであることを、自らの経験も率直に明らかにしながら述べるものでした。安原さんのお話に多くの参加者が裁判員裁判での市民の役割の重要性を学ぶことになりました。
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    「司法の危機」はなぜ起きたか − 宮本康昭さんの講演
開催日:2009年7月16日 場所:東京
 宮本さんのお話は憲法の理念を実現する裁判官になろうと決意したことから始まり、裁判官として「労働者の権利」や「裁判を受ける権利」などに関わる裁判についての具体的な経験も語っていただきました。
宮本さんは1971年に再任を拒否されることになりましたが、その背景には、当時憲法に忠実な判決が増えていたことへの政治家などの不満の高まりがあり、その中で最高裁が青法協つぶしに動いたということを解明しました。宮本さんは再任拒否後の弁護士として司法改革のとりくみも語りました。参加者が司法改革の到達点と課題を学び考える有意義な機会になりました。
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    「宮本判事補再任拒否をめぐって」 − 鈴木經夫さんの講演
開催日:2009年7月16日 場所:東京
 宮本康昭判事補の再任拒否(1971年)は最高裁による裁判官「統制」の象徴的事件でした。宮本判事補と同じ年に裁判官になった鈴木さんは、この問題をめぐる当時の動きをリアルに紹介・検証してくださいました。
鈴木さんのお話は最高裁の裁判官「統制」を厳しく批判するものでしたが、その語り口は穏やかで、またその当時の裁判所の雰囲気を冷静に分析したものでしたの、多くの参加者の共感を呼ぶことになりました。
裁判官退官後弁護士として活動されている鈴木さんは、その目線からこんにちの裁判のあり方への問題提起もしていただきました。
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    この世界で平和に暮らすには − 福島重雄さんの講演
開催日:2009年6月22日 場所:東京
 福島さんはご自分の一生を振り返るお話をしてくださいました。福島さんは自衛隊を違憲とする唯一の判決を書いた裁判長でしたが、担当した長沼ナイキ基地事件自体は難しい判断が必要だったわけではなく、要するに自衛隊を違憲だと言うかどうかにつきる事件だったと述べました。福島さんは大学生の時に刑法学者・滝川幸辰教授から「まず自分がどう思うのかを述べよ」と言われ、以来そのような思考パターンになったということでした。自分がどう考えるのかが問われるのだと、多くの参加者が感じることになりました。
福島さんのお話は「この世界で平和に暮らすには、武器、軍隊の放棄が必要」で締めくくられました。
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    誰のために働き、考え、生きるか − 花田政道さんの講演
開催日:2009年6月22日 場所:東京
 花田さんは、戦後の裁判所には、日本国憲法を学んだ若い裁判官たちが自主的に考え判断し、意欲を持って仕事にあたれる雰囲気があったこと、そうした裁判官たちが普通に青年法律家協会(青法協)加入していたこと、ところが青法協裁判官が偏向していると言われるようになり、それは実態と違うと思ったこと、などを語られました。
花田さんのお話は「法律家として・・・誰のために働き、考え、生きるか」という問題提起で締められました。学生時代の活動にも触れながら、「地域の人々と同じ喜びと同じ悲しみ」を分かち合っていきたいということでした。
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    「裁判と正義 − 心の中の憲法」 − 井垣敏生さんの講演
開催日:2009年6月5日 場所:大阪
 井垣さんのお話は、貧しく、差別を受けていた少年時代を振り返りながら、朝日訴訟や八海事件などに接する中で憲法と青年法律家協会に出会ったことからはじまり、その後民事中心の裁判官生活40余年の中の思い出の判決について語られました。医療過誤事件、公害事件、じん肺事件、女性差別事件等々で、なんとしても被害者に身を寄せた判決を書こうと情熱を燃やした経験に多くの参加者が胸を打つことになりました。
井垣さんは、「裁判官としての矜持」は「正義そして愛そして憲法」と語り、裁判官は理屈とともに憲法の感覚を磨くことが必要だと述べ、講演を締めくくりました。
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    憲法理念ふまえた裁判の経験 − 大石貢二さんの講演
開催日:2009年6月5日 場所:大阪
 大石さんのお話は、裁判官になった初期の頃に、先輩裁判官から徹底的に記録を読み、調べることなどの重要性を学んだことから始まりました。
大石さんは、裁判官が「憲法を守るのは当然」と青年法律家協会(青法協)に加入したこと、青法協への攻撃は悩ましかったが、継続することを決意し、裁判への意欲が沸いたことなどもお話しされました。最後に、宗教上の理由で剣道の授業の強制を拒否する権利を認めた裁判や弁護士の拘禁者との接見への拘置所の制限は違法とした裁判など、自らが憲法の精神をふまえ判決を書いた経験なども述べ、参加者に感銘を与えました。
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    「裁判官の独立」を考える − 石松竹雄さんの講演
開催日:2009年5月22日 場所:東京
 石松さんのお話はアジア太平洋戦争時の勤労動員の経験などから始まり、戦後日本国憲法ができ、その第9条が軍隊の保持を放棄したことに当時はびっくりしたが、憲法第9条は何としても守らなければならないと述べました。
石松さんは「裁判官の独立」ということを考える重要性も語られました。かつては裁判長ではない裁判官も意見も尊重されていたということを紹介しながら、一人ひとりの「裁判官の独立」が守られるべきことを主張されました。
石松さんは裁判員制度に関する参加者の質問に対して、その制度の改革課題などを語りつつ、「裁判員は裁判官に負けるな!」と呼びかけ、市民への期待を語りました。
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    国民と裁判官の協同を! − 守屋克彦さんの講演
開催日:2009年5月22日 場所:東京
 守屋さんのお話は子どもの頃の戦争の記憶などから始まり、日本国憲法が制定され、違憲立法審査権の担い手としての裁判官を志した思いを述べました。
守屋さんは裁判官になってから多くの優れた先輩裁判官から学んだことを紹介した後、「平賀書簡問題」(1969年)が発生し、青年法律家協会所属の裁判官が政治家から攻撃され、司法権の独立が危機に晒されたこと、以降良心的な多くの裁判官が毎年全国裁判官懇話会を開催してきたこと、それが今日の国民の司法参加への動きに結びついていったこと、などを語られました。最後に、国民と職業裁判官との協同の重要性を指摘しました。
守屋さんには興味深い画像も数多く見せていただきました。

※この講演は法学館憲法研究所のホームページから動画配信されています。こちら
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