報告「司法の現状と変革の方向 ⇒ 今、何が問題か」 筆者:H・O
2012年3月19日

 2011年10月、日本民主法律家協会は「『司法改革』10年 − 司法は国民のために役割を果たしているのか?」をテーマに司法制度研究集会を開催しました。この集会での守屋克彦さん(弁護士・元裁判官)の報告で、「法と民主主義」2011年11月号に収載されたものです。
 戦前の司法権は司法省という行政機関に属していました。司法権は日本国憲法制定によって行政機関からの独立を果たし、最高裁判所が誕生しました。しかし、司法権の真の独立を求める裁判官は最高裁の裁判官には登用されず、司法権が真に行政権から独立しているとは言い難い状況がこんにちに至るも続くことになっています。同じ敗戦国・ドイツの場合は戦前のナチスの支配のもとでの裁判への深い反省がありますが、日本の場合は日本国憲法が制定されたにもかかわらず、戦前の裁判所が社会的に問われることなく、戦後の裁判にも尾を引くことになってしまいました。戦後、日本国憲法の精神に則った裁判をおこなう裁判官も誕生するようになりましたが、そうした裁判官が裁判所の中での処遇で不利益を受けるような状況も続きました。
 守屋さんはこのような戦後の司法をめぐる基本的な状況を振り返りながら、日本国憲法の精神に則った裁判所と司法を実現していく課題と展望を述べています。
 戦後日本国憲法の精神に則った裁判に努めた裁判官30人の講演録集『日本国憲法と裁判官』の企画・編集にあたった守屋さんならではの問題提起で、裁判所と裁判官をめぐる歴史を学ぶ重要性を再確認させてくれる報告です。