論文「法教育推進の方向性」 筆者:H・O
2012年2月6日

 小中学校・高校での法教育が各地で進められています。法律家が学校の教員といっしょに授業をすることも増えています。法務省が検察官を、弁護士会や司法書士会などが弁護士・司法書士を講師として学校に派遣しています。法教育の進展も司法制度改革審議会意見書(2001年)によって加速されました。この論文は、いま進められている法教育の理念・目的と内容について、その懸念される問題点を明らかにしつつ、本来あるべき法教育の方向性を提示するものです。
 まず、こんにちの法教育が新自由主義的な国家・社会の再編の一環として位置づけられている面がある点を指摘します。そして、東京都教育委員会の「『法』に関する教育カリキュラム」(2011年4月)などにもその考え方が反映しているとし、法教育が児童・生徒に対して法やルールを守ることを強調するような方向に傾斜することの問題点を指摘しています。
 こうした現状に警鐘を発しながら、「法教育のあるべき方向性」として、既存の法を前提に考えるだけではなく、その法の是非も含めて考える教育、理想の法を考える際に憲法をその重要な判断基準にすえること、などを説いています。
 いま進められている法教育は、法務省や文部科学省の政策が反映しつつも、現場の教員の方々によって、弁護士会や司法書士会などとの連携をはかりながら多様に展開されており、法教育が懸念される状況を克服して「あるべき」方向に向かうのかは今後の各方面の努力にかかっています。

 
【書籍情報】
「法と民主主義」2012年1月号に収載。筆者は渡邊弘氏(活水女子大学准教授)。