対談録「公権力の『隠蔽体質』 ―裁判所は果たして機能しているのか?」 筆者:H・O
2014年9月15日
 
 作家で日本推理作家協会理事長の今野敏さんと元裁判官で裁判に関する多くの著作を持つ森炎さんの対談録です。いわゆる郵政不正事件での検察の不祥事が暴かれたこと、捜査の可視化についての検討がすすめられてきたこと、袴田事件で再審開始決定が出されたこと、などについて、それぞれの意見が開陳されています。
 議論は多方面に及んでいますが、起訴された刑事事件の有罪率が99.9%になっていることをどう考えるか、ということがその重要なポイントになっています。森さんは被告人の99.9%が有罪というのはありえない、そのようになっている刑事司法のシステムの改革が必要だという立場で発言しています。裁判官としての経験をふまえた主張には説得力があります。今野さんは、無実であっても起訴されてしまったら99.9%が有罪となってしまうことの恐ろしさを語っています。
 今野さんはまた、長年警察を取材してきた経験から、事件を捜査する警察官の仕事ぶりと正義感を基本的に評価しています。森さんは、そういう状況が、検察・裁判所が十分な役割を果たしていないことを際立たせることになっているとの認識を示しています。

 この対談録は雑誌「冤罪File 21」2014年7月号増刊(希の樹出版)に収載されています。