死刑制度を考える  
2014年10月20日
 10月11日、「世界死刑廃止デー企画 響かせあおう 死刑廃止の声」が東京都新宿区・四谷区民ホールで開催されました。集会の主催は、死刑廃止運動を進めている「死刑廃止国際条約の批准を求める FORUM90」です。
 集会では、袴田事件で再審開始決定を受けた袴田巖さんやお姉さんの秀子さんなどの挨拶があり、ジャーナリストの青木理氏、同じく澤康臣氏、弁護士でフォーラム90メンバーの安田好弘氏、3者から、日本の死刑制度の実態や米国での死刑制度の現状やその廃止運動の取り組みなどの話がありました。
 澤氏は、米国の死刑制度と各州における死刑制度廃止運動が進んでいる状況の話がありました。米国では、死刑に関して3つの公開の原則があります。第一に、裁判記録の公開です。記録がデータベースになっていて、だれでもがインターネットで検索できます。第二に、死刑囚の情報もデータベースになっていて、検索できます。第三に、執行情報の公開です。執行予定日が公表され、州によって異なりますが、執行の立会いも被害者遺族や報道関係者などが可能で、ほとんど公表されない日本と大きく異なることに驚かされます。
 国の情報公開制度が日本に比べて徹底している理由として、建国以来の権力の暴走を監視するための国民の知る権利の行使への米国民の意識レベルの高さがあります。また、自らも動こうとする米国国民の気質に裏づけされ、死刑存続州でも死刑廃止の市民運動があり、2012年のコネティカット州、2013年のメリーランド州というように、ここ数年は、毎年死刑廃止法が州議会で可決されています。メリーランド州では、被害者遺族49人が州議会に死刑制度廃止の書簡を提出されるなど、遺族と市民運動と協同した運動になりました。日本に比べ、死刑の実態が格段に公表されている米国では、死刑の存続是非の議論も活発になるとの指摘は、日本にも当てはまると思いました。
 青木氏は、日本の死刑制度があまりにも公表されず、ブラックボックス化している実態を指摘しています。76歳と高齢で、歩行ができない死刑囚が刑務官に支えられて絞首刑の場所に立たされている姿を見たら、死刑存続を主張する人はどう思うだろうかと、そのような事例を紹介しました。
 安田氏の「死刑はえん罪を生み出し、再審の機会を奪い、えん罪をそのままする」と、長らく死刑事件の弁護活動を担当してきた経験から、死刑制度の本質を語りました。
 国民主権の民主制度下での死刑の存続の是非は、死刑制度の情報公開により、国民がその実態を知るところから始める重要性を実感した話でした。(T.S)