裁判員体験者の「心のケア」に実効ある施策を!  
2010年9月20日
朝日カウンセリング研究会裁判員制度プロジェクトチーム
* 2010年9月6日、NPO法人・朝日カウンセリング研究会の裁判員制度プロジェクトチームのチーフ・西村寛子さん他に裁判員制度に関わる取り組みと思いを語っていただきました。以下、お話しの内容です。(文責は「WEB市民の司法」編集部にあります。)
「裁判員制度ワークショップ」の
パネルディスカッション
  朝日カウンセリング研究会はカウンセリング学習の提供、相談活動などを行ってきました。2006年、私たちは裁判員制度が導入されることを知り、裁判員制度の学習を始めました。すると、裁判における裁判員には「自分で感じたこと、考えたことを自分の言葉で語る」ことが求められること、それはまさにカウンセリング学習の目標と合致するということに気づきました。また、裁判員制度での裁判官3人と裁判員6人による評議は、私たちが学んできた、「グループ」学習でコンセンサスを得るプロセスと重なるところが多いことにも気づきました。
2007年、私たちは裁判員制度プロジェクトチームを発足させ、以降学習会を積み重ねました。また裁判所が実施した裁判員裁判の模擬裁判も実際に体験しました。その中で、裁判員裁判の体験者の「心のケア」の重要性を考えるようになりました。裁判員は閉鎖空間に拘束され、事実認定や量刑判断に際して強い心理的ストレスを感じることになります。そして、裁判終了後も守秘義務により裁判員の体験を他人と分かち合えない心理的ストレスを味わうことになります。このことに対して、最高裁判所も裁判員体験者の「心のケア」への対応策として電話相談や個別のカウンセリングや医療機関による治療などを検討していました。しかし、それは心が弱くて裁判員体験に耐えられなかった人への対応を想定するもので、私たちは、希望する裁判員体験者誰しもが参加でき、「心のケア」がはかられる制度の創設を提言することにしたのです。
「ワークショップ」の
「法廷場面 被告人証言」
  2009年5月20日、それは裁判員制度が導入される前日ですが、私たちは最高裁判所に対して「裁判員体験者の『心のケア』に『アフターケア・グループ』導入の提言」を提出しました。私たちはこれまでカウンセリングや臨床心理学を学んできました。そこには「グループ」での学習や治療という手法があります。それは、自己をより成長させたい人たちや類似の心理的問題を抱えた人々がグループ(通常6人以上10人くらい)をつくり、専門家が立会い見守る「守られた環境」の中で、自己の体験を他者と分かち合う(シェアする)ことにより、自分の体験を整理し、「心」を癒し、また自己成長や一定の治療効果も得られる、というものです。この手法を裁判員体験者の「心のケア」に活かすことの検討を求めたのです。
私たちの提言への最高裁判所の対応はこれからですが、第二東京弁護士会裁判員裁判実施推進センターが私たちの提言に関心を寄せ、私たちもそのご質問にお答えしたりして、議論の輪が広がっています。
「ワークショップ」での模擬評議体験
  裁判員裁判体験者の心理的ストレスの深刻さには多くの裁判員制度関係団体も着目し、私たちも他の団体とともに裁判員経験者の交流の場を設けることを検討してきました。そしてこの8月3日、いっしょに「裁判員経験者ネットワーク」の設立を発表し、9月20日に第1回裁判員経験者交流会を開催することになりました。(裁判員経験者ネットワークのホームページはこちら。)
私たちは臨床心理を学びカウンセリング活動をすすめてきた経験を活かし、今後とも裁判員体験者の心理的負担の軽減についての提言をすすめていくことにしています。
 
*編集部注
朝日カウンセリング研究会裁判員制度プロジェクトチームの活動はこちらをご覧ください