当番弁護士制度はいまも大切  
2010年2月22日
南口芙美さん
(「京都 当番弁護士を支える市民の会」事務局)

―――逮捕勾留された被疑者にも弁護人を依頼する権利を保障しようと、弁護士会がボランティアで当番弁護士制度をはじめて20年になろうとしています。この間、当番弁護士を支える市民の会が全国各地に生まれましたが、京都では大変地道な活動が続いています。活動の内容・経験からお聞かせください。
(南口さん)
「京都 当番弁護士を支える市民の会」は1998年に設立されました。以降、年に4回ずつくらいの企画を実施しています。刑事司法の当事者の方や、刑事弁護人から体験を伺い、問題点等をともに考えるような企画や、刑事法の学者や弁護士による勉強会を開いています。昨年秋には足利事件をテーマに冤罪被害者の菅家さんと弁護人の佐藤さんなどを招いてシンポジウムを行いました。弁護士会にもいろいろと協力していただいています。
刑事裁判への国民の参加=裁判員制度が実施されることになり、最近は刑事司法への市民の関心が高まっているようで、私たちのイベントにも多くの市民の方々が参加してくださいます。当番弁護士制度とその意義についての理解も広がってきているように思います。

―――これまで刑事裁判の被告人で資力のない人には国選弁護人がついていましたが、被疑者段階でも弁護人がつけられるべきだと弁護士会などが主張してきました。ようやくその主張が2006年から実現し、2009年からは多くの事件に適用されるようになりました。この制度改革をどのように評価していますか。
(南口さん)
被疑者段階で身体拘束を受ける場面で、国選弁護人がつくようになったことは、大きな一歩であると思います。一見争いがないような事件の被疑者にも国選弁護人がつくことによって、漫然と進めていた捜査に、弁護人からのさまざまなチェックが入ることになり、緊張感が生まれている場合もあるのではないかとも聞きます。
ただ、対象の罪が限定されている点と、勾留後に限定されている(逮捕段階ではつかない)という点に問題があると考えています。市民は、一方的に身体を拘束されるのですから、例え、軽微な罪であっても、短い時間であっても(逮捕されて3日という時間を短いとは思いませんが)、専門家のアドバイスを受けることなく、身体の拘束を受けるということは、なくしていかなければならないと思います。
また、早い段階から弁護人がつくことが、その弁護の在り方によっては、後々マイナスになる可能性があります。適切な弁護を受ける権利を、どのように保障していくのかが今後の課題だと思います。

―――刑事司法は新たな段階を迎えているわけですが、皆さんは今後どのような活動を考えているのでしょうか。
(南口さん)
被疑者国選弁護制度が実現したことは、大きな一歩ですが、逮捕された段階ですぐに駆けつけ、初回は無料でアドバイスするという、当番弁護士制度自体の重要性は今も変わりません。私たち1人1人に、公正な刑事司法手続きが保障されていると言えるようになるためには、誰でもがいつでも専門家とのコンタクトを取れるということが不可欠です。身体拘束の時間の長短や、行為の軽重でその必要性が変わるものではないと思います。
この間裁判員制度の実施など刑事司法についての様々な改革がおこなわれ、刑事司法の分野だけでも、様々な課題で多くの市民団体が活動しています。私はそうした取り組みが横につながり、広がっていくことで、よりよい改革が実現してほしいと思っています。

―――皆さんの取り組みと経験は全国の多くの方々に希望を与えるものだと思います。ありがとうございました。