市民の立場で裁判員制度に提言する  
2009年12月28日
伊藤秀行さん(「市民の裁判員制度めざす会」共同代表世話人)

―――伊藤さんは積極的に裁判員制度の意義と課題を語っておられます。伊藤さんはどういう思いから裁判の問題に取り組んでいるのでしょうか。
(伊藤さん)
私は大学生の頃に憲法を勉強しました。憲法に関わる事件の判例などを勉強してみると、かつてはいろいろな裁判で違憲判断も出されましたが、憲法を守ろうという青年法律家協会の裁判官が攻撃されたこともあって、これはいかがかと思うような判断が多くなったことを知りました。これが、私が司法に興味を覚えるようになったきっかけです。その後私が、仕事をしながら弁護士会の市民モニターになった(約20年前)のも、そういう経緯からです。
現在事務局を引きうけてくれている岩崎弁護士のすすめがあり6年ほど前、弁護士会の市民モニターだった有志で陪審制度について考える会をつくりました。やがて司法制度改革の議論が広がり、裁判員制度の構想が出てきたことから、私たちはその会を現在の「市民の裁判員制度めざす会」に発展させました。

―――裁判員制度が始まりましたが、伊藤さんは裁判員制度のスタートをどのように評価しておられますか。
(伊藤さん)
裁判員制度はまだ始まったばかりですし、また、いわゆる否認事件の公判もわずかであり、その評価は基本的にはこれからだと思います。ただ、私が実際に裁判員裁判を傍聴したり、裁判員になった方の経験談を聞いての印象としては、“改善すべき問題点もあるが、全体的には制度を導入したことはよかった”ということです。裁判所も、検察庁も、弁護人も、裁判のことを裁判員たちにわかりやすく伝える努力を始めています。また、裁判に対する市民の興味が広がっていることは重要なことだと思います。
裁判員には守秘義務が課され、評議のことを語れず、その結果市民が裁判員制度をイメージしにくいところがあります。私は、それは問題であり、改めるべきだと考えますが、このような問題点を一つひとつ解決していきながら、司法への市民参加をより充実させていくべきだと思います。

―――伊藤さんが共同代表世話人を務める「市民の裁判員制度めざす会」の活動を紹介してください。
(伊藤さん)
「市民の裁判員制度めざす会」は、市民のための裁判員制度の実現をはかることを目的に、愛知県において2003年7月から活動を始めました。市民や弁護士などが毎月集まり、関係機関に提言をしたり、市民に対する意見表明活動をしてきました。
裁判員制度が実際にスタートしましたので、私たちは活動をさらに発展させたいと考えています。たとえば、裁判員には様々な精神的負担が生じますので、なんとか裁判員を経験された方々をサポートできないかと検討していますが、そのために裁判員経験者のネットワークを築いていければと思います。また、裁判員制度は開始3年後には見直しをすることになっています。それは裁判員となる市民の声もふまえて行われるべきで、見直しをする第三者委員会の委員には裁判員となる市民も加えるべきだと思います。
裁判員制度については弁護士など法律の専門家からの発言が多いのですが、私としては、裁判員、つまり市民の立場から裁判員制度を考え発信していく活動をしていきたいと思っています。

―――市民の立場での提言は本当に重要だと思います。今後とも連携できればと思います。ありがとうございました。

 
【伊藤秀行さんプロフィール】
物流コンサルタント会社を経営。「市民の裁判員制度をめざす会」共同代表世話人。