被疑者国選弁護  
2010年5月3日
憲法37条3項は、「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する」と規定しています。この規定を受けて、「貧困その他の事由により弁護人を選任することができない」被告人に、裁判所(国)が「国選弁護人」を選任するという制度(刑事訴訟法36条)が、以前から存在していました。
この制度は、あくまで「被告人」、すなわち刑事事件で起訴をされている人だけを対象とし、起訴前の段階、すなわち、「被疑者」については適用されていませんでした。しかし、被疑者段階でも、弁護人の援助を受ける必要性が高いことはいうまでもありません。当番弁護士制度は、被疑者段階で国選弁護が認められていない段階で、実質的にそれを実現しようとするものだったといえます。
2006(平成18)年になって、ようやく、被疑者段階でも国選弁護人を選任することができるようになりました。勾留状が発せられている被疑者について、請求により、又は一定の場合に裁判所の職権で、国選弁護人が選任されることとなったのです(刑事訴訟法37条の2、37条の4)。対象事件は、2009(平成21)年に「死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる事件」に拡大され、殺人、強盗などの重罪事件だけでなく、窃盗、傷害、自動車運転過失致傷、覚せい剤取締法違反(使用、所持)など、広範囲の刑事事件に適用されるようになっています。