執行猶予  
2009年10月26日
 刑の執行猶予とは、情状がよい被告人に一定期間その刑の執行を猶予し、その期間を犯罪を犯すことなく経過すれば刑の言渡しが失効する制度です。
なぜこのような制度があるのでしょうか? それは、犯罪者の社会的更生を配慮したからです。刑の執行を受けて刑務所に行くと、社会的地位や仕事を失うなどの不利益を受け、刑を終えた後に社会で更生するのに大きな困難を来します。こうした不利益を回避するだけでなく、執行猶予を受けた者はそれが取り消されないように平穏無事な生活を心がけるため更生が促進されるのです。
事実関係に争いのない事件では、弁護活動の中心は執行猶予の獲得に置かれることが多く、裁判員の判断もその点が大きな論点となるでしょう。
執行猶予ができるのは次の場合に限られます。
1.前に禁固以上の刑に処せられたことがない者(刑を終えてから5年経過した者なども含む)が、3年以下の懲役や禁錮または50万円以下の罰金の言渡しを受けたとき
2.禁固刑以上の刑に処せられたが執行猶予中の者が、1年以下の懲役や禁固の刑の言い渡しを受けたとき
2は「再度の執行猶予」と言い、「情状に特に酌量すべきものがあるとき」に認められます。しかし、執行猶予に保護観察が付されたときは再度の執行猶予は認められません(保護観察に付すときは、この点も考慮する必要があります)。