論稿「われわれの刑事司法はどこに向かうべきか」 筆者:T・S
2015年2月16日
 「法制審議会 ― 新時代の刑事司法制度特別部会」の「新たな刑事司法制度の構築についての調査審議の結果案(最終とりまとめ)(2014年7月)を包括的論評した、三島聡・大阪市立大学教授の論稿です。
 論稿では、厚生労働省郵便不正利用事件(「村木事件」)に端を発した刑事司法改革のために、この特別部会が設置された経緯に立ち戻ります。改革すべき課題な何かを「検察官の在り方検討会議」や特別部会での、村木厚子氏の生々しい過酷な体験の発言を取り上げ、冤罪事件が作られる取調べの問題点を明らかにしています。また、改革への抵抗がいかに頑なものであるかも中間処分や録音・録画での議論のやり取りなどを紹介しています。
 また、調査審議の結果案は、一部評価すべき項目があるものの、取調べ依存の調書裁判を維持し、捜査・訴追権限を強化した被疑者・被告人の防御権を今以上に制約するものとしています。その背景には、弁護士や村木氏や周防正行氏(映画監督)などの一部委員を除いた、捜査・訴追機関の委員ばかりでなく、裁判所・研究者までもが刑事司法の実務の現状に肯定的で、改革の必要性を感じていないことにあるとしています。

 この論稿は『刑事司法改革とは何か 法制審議会特別部会「要綱」の批判的検討』(2014年9月、現代人文社)に収載されています。