鼎談・論稿「取調べの可視化」 筆者:T・S
2014年11月24日
 2014年7月、「法制審議会 ― 新時代の刑事司法制度特別部会」が採決した「最終とりまとめ」の問題点のうち、取調べ可視化について批判的に検討するもので、2013年7月の時点で、淵野貴生・立命館大学教授、小坂井久弁護士、村井敏邦・大阪学院大学法科大学院教授が鼎談したものです。
 鼎談ではまず、「法制審議会 ― 新時代の刑事司法制度特別部会」の幹事である小坂井久弁護士が部会での議論状況の概要を紹介しました。当時、可視化に関する制度構想案は、原則全過程の可視化の案とともに捜査官の裁量により録音・録画の決める案が出されていたこと、このことについてさまざまな検討課題が示されることになったことを明らかにしています。
 鼎談では、取調べの録音・録画についての被疑者の拒否権の是非、録音・録画の例外事由の範囲、可視化導入の理論的根拠と黙秘権の実効的保障、弁護人の立会いを要求すると取調べが終了するアメリカの制度、イギリスでの録音・録画制度の状況などが話されました。
 論稿は、村井敏邦教授がこの鼎談以降の特別部会での議論や「事務当局試案」、2014年7月に採択された最終的なとりまとめについて分析し、鼎談を補足したものです。最終的なとりまとめに全面可視化に反対する警察の主張が反映し、最終的に可視化は裁判員裁判対象事件と特捜事件に限定したものになった経緯とその問題点を指摘しています。また、最終的に可視化の例外が広すぎることになったという問題点も指摘しています。

 この鼎談・論稿は『刑事司法改革とは何か 法制審議会特別部会「要綱」の批判的検討』(2014年9月、現代人文社)に収載されています。