座談会録「司法は生きていた −3・11に真摯に向き合った福島地裁判決」 筆者:H・O
2014年10月6日
 3・11以降に原発の運転差し止めを求める訴訟が各地で提起されました。2014年5月11日、その一連の訴訟の中の最初の判決が福井地裁で出されました。それは大飯原発の差し止めを求める住民が全面的に勝利する内容のものでした。
 この座談会録では、脱原発弁護団全国連絡会の共同代表である海渡雄一弁護士・河合弘之弁護士、船山泰範教授(日大・刑法学)、古川元晴氏(「法の支配」実務研究会代表、元京都地検検事正)がその福島地裁判決などの評価を議論しています。
 議論の中で海渡弁護士は「従来、同種の訴訟で裁判所は原発の運転にともなう安全確保という複雑で高度に専門的な問題については裁判所としての判断を避けて、行政の裁量に委ねる傾向がありました」と指摘しながら、こうした問題についての今回の福島地裁判決文を次のように紹介しました。
 「原子力発電技術の危険性の本質及びそのもたらす被害の大きさは、福島原発事故を通じて十分に明らかになったといえる。本件訴訟においては、本件原発において、かような事態を招く具体的危険性が万が一でもあるかが判断の対象とされるべきであり、福島原発事故の後において、この判断を避けることは裁判所に課せられた最も重要な責務を放棄するに等しい」
 司法・裁判の役割についての真摯な判断として評価されるのではないかと思います。
座談会では、福井地裁の実質的な判断の内容とその意義についても各氏から語られています。

 この座談会録は月刊「世界」2014年7月号に収載されています。