座談会録「原点はなぜ見失われたのか −徹底検証『新時代の刑事司法制度特別部会』 筆者:H・O
2014年8月11日
 
 2014年7月9日、法務省の法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」が法務大臣への答申案の取りまとめを行いました。それは、捜査の取調べの録画・録音(可視化)や捜査における通信傍受の拡大などを内容とするものとなり、今後この取りまとめの内容にもとづく法制化が進められる予定となりました。
 この座談会は、この特別部会の審議の最終段階に行われ、部会の委員を務めた映画監督・周防正行さんと、弁護士・山下幸夫さん、ジャーナリスト・青木理さん、刑事訴訟法学者・指宿信さんによって行われました。
 座談会では、この特別部会は、もともとは大阪地検特捜部による証拠改ざん・隠蔽事件で社会的に糾弾された検察の捜査のあり方を見直し、取調べの録画・録音(可視化)などを進めることを目的とした検討の中で設置されました。ところが、その審議は、取調べの録画・録音(可視化)の範囲は限られたものとなり、通信傍受など新たな捜査手法を拡充するものになったとし、この座談会では「原点はなぜ見失われたのか」というテーマで議論されました。
 座談会では、取調べの録画・録音(可視化)への警察関係者などの抵抗の様子やこの問題についての裁判官の感覚、刑事訴訟法学者の中にある考え方などが示されており、部会の議論の問題点を炙り出しています。
 こうした状況が生じている背景について、周防さんは、多くの市民は自分が冤罪に巻き込まれてしまった時には刑事司法システムの問題点に怒ることになるが、日常的には他人事になっている、という現状を指摘しています。

 この座談会録は雑誌「世界」2014年6月号(岩波書店)に掲載されました。