『冤罪を生まない刑事司法へ』 筆者:H・O
2014年3月24日
 
 法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」での制度改革についての多面的な検討が大詰めを迎える状況の中で、その検討内容と問題点を明らかにし、「冤罪を生まない刑事司法」への課題を提起する書です。Q&A方式で、警察や検察の取調べの可視化(録音・録画)、証拠の開示、勾留と在宅の間の中間的処分の創設、などについて説明されています。本書には、冤罪防止のための市民グループの活動、日本における冤罪事件の経緯や関連文献の紹介なども掲載されています。
 本書には、布川事件で無罪になった桜井昌司さんによる国連・拷問禁止委員会日本政府報告書審査傍聴記も収載されています。ここでは、日本政府は日本の刑事司法システムは基本的に問題ないと認識していることが述べられています。法制審議会の上記特別部会では制度の抜本的改革には後ろ向きの議論が横行していますが、そこには日本政府のその認識が反映されているのだろうと思います。本書は、「冤罪を生まない刑事司法」への改革は、日本の刑事司法の問題点についての国民の認識の広がりが肝心である、ということを改めて感じさせてくれます。
 
【書籍情報】
2014年3月、現代人文社から刊行。著者は現代人文社編集部+水谷規男・大阪大教授。定価は本体900円+税。
 
*上記桜井昌司さんは再審請求をしていた時期に当サイトで「布川事件の43年」と語っていただきました。