書籍『裁判員のあたまの中 −14人のはじめて物語』(その2) 筆者:H・O
2014年1月13日
 
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 本書は裁判員として裁判にたずさわった方々の経験談が中心で、その生の声はこれから裁判員になっていく市民にリアルなイメージを提供してくれます。同時に、それは司法への国民参加という新しい制度をさらに改革・改善していく検討にあたっても有意義な素材となっています。本書では、裁判員裁判を担当した元裁判官である杉田宗久・同志社大教授、裁判員制度のさらなる改革にとりくむ宮村啓太弁護士、司法制度について研究する米国人研究者であるダニエル・H・フット教授、裁判法・法社会学を専門とする飯考行准教授が、裁判員経験者の体験談から読み取るべき教訓や検討課題などを語っています。
 これらの専門家は害して裁判員制度が導入されたことの意義を評価しつつ、裁判員経験者の生の声がまとめられたことを歓迎しています。その上で、全体として裁判員が刑事裁判の“お飾り”のような取り扱われ方になっていること、「疑わしきは被告人の利益に」という原則や黙秘権の内容・趣旨が裁判員に正しく伝わっていない例があることとその重大さ、なども指摘しています。その他、制度改革に向けた大胆な問題提起もなされています。
 
【書籍情報】
2013年11月、現代人文社から刊行。編著者は裁判員裁判経験者である田口真義さん。定価は2200円+税。