書籍『裁判員のあたまの中 −14人のはじめて物語』(その1) 筆者:H・O
2014年1月6日
 
 裁判員を経験した方々がその経験を語ってくれる本です。
 裁判員は実際にはどんな仕事をし、それをどのように感じたのか。それは、いずれ裁判員になるかもしれない、多くの市民が知りたいことです。
 この本で、どのように裁判員としての呼び出しが来て、どのような裁判員が選ばれるのか、裁判員裁判の法廷はどんな様子なのか、評議はどのように行われるのか、等々がリアルにわかります。そして、多くの裁判員が担当する裁判に真摯に向き合っていることもよくわかります。裁判員としての経験を語ってくれる人たちが裁判に真摯に向き合ったのは当然なのでしょうが、彼ら・彼女らは他の裁判員も誠実に役割を果たしたと述べており、市民が裁判に参加していることの積極的な意義が確認できると思われました。
 もちろん、裁判への市民参加の実質的な内容も吟味されなければならないでしょう。とりわけ、被告人が無罪を主張する、否認事件とそうでない事件での裁判員の仕事は区別して論じられる必要があるでしょう。「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則が裁判員にどのように理解され、そのことによって従来の職業裁判官のみの裁判とどう変わっているのか、いないのか。それは特に注目され、深く突っ込んだ分析が期待されます。
 死刑を求刑される事件とそうでない事件も区別して分析される必要があると思われます。
 裁判員には守秘義務が課されていますが、それは他の裁判員のプライバシー保護などが大きな目的であり、ある程度は語れるはずです。引き続き、多くの裁判員経験者の方々が裁判員裁判の実際を語ってくださることを期待します。
 
【書籍情報】
2013年11月、現代人文社から刊行。編著者は裁判員裁判経験者である田口真義さん。定価は2200円+税。