書籍『傍聴弁護人から異議あり!』(その1) 筆者:H・O
2013年11月11日
 飲酒運転で人をはねて殺してしまったが、まったくそのことを覚えていない被告人。弁護人は、事件を丹念に辿り、被告人の主張を聞いた上で、その子どもの年齢も気にかけて、刑期を7年以下とすることを獲得目標に弁護活動を展開しました。被告人は大変悪質なことをしたと思っている裁判官・裁判員に弁護人はどうその主張を納得してもらうのか。
 そんな風に、この本では、著者が弁護人になったつもりで、裁判での獲得目標とそれを達成するための戦略・戦術を考え検証します。
 弁護人の立場に立って考えてみると、被告人が起こした(とされる)事件の事実関係、その背景、被告人に情状すべきこと、などをリアルにあぶり出し、主体的に考えるようになります。このように考えてみることは「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則を自分なりに理解するためにも効果的であるように思われます。
 思わず人を殴って殺してしまった被告人、放火した記憶のない被告人に執行猶予はつくかどうか、という実際の裁判での弁護活動も紹介されています。スリリングな展開に引き込まれながら、自分だったらどう弁護人として裁判官・裁判員を説得するかを考えさせてくれる本です。

<つづく>
 
【書籍情報】
2013年10月、現代人文社から刊行。著者は多数の裁判関係の著書を持つ、フリーライターの北尾トロさん。定価は1,700円+税。