書籍『誰が法曹業界をダメにしたのか』(その3) 筆者:H・O
2013年9月2日
前々回前回のつづき>

 本書は裁判の種類ごとに「ここがダメ」を明らかにしています。
 「民事裁判のここがダメ」では、日本には「懲罰賠償」やクラスアクションの制度がなく、それが日本人をして裁判にあまり期待させない重要な要因になっていること、証拠開示制度が不十分になっていることも市民が裁判を活用しない要因になっていること、などを指摘しています(その内容や考え方は実際に読んでいただきたいと思います)。
 「行政訴訟のここがダメ」では、原発訴訟を例に裁判所が住民の要求に冷淡であること、その重要な背景として裁判所と法務省の「癒着」的関係があること、などを解き明かしています。
 「刑事裁判のここがダメ」では、裁判官の誤審が少なくないことを示しながら、その要因として、裁判官の姿勢とともに、代用監獄の温存、取り調べ可視化への捜査当局の抵抗、などを挙げ、その上で、これらを克服していくためにも裁判員制度を育てることの重要性を説いています。
 全体として、こんにちの司法が国民の期待を裏切っている状況への憤りに溢れながらも、その打開への課題が提起されています。
 
【書籍情報】
2013年8月、中央公論新社から中公新書として刊行。著者は岡田和樹氏・斎藤浩氏(いずれも弁護士)。定価は777円(税込み)。