論稿「イラク派兵違憲判決の今日的意義」 筆者:H・T
2013年3月18日
 2008年4月、名古屋高裁において「イラクでの航空自衛隊の空輸活動は、武力行使を禁止した憲法9条1項に違反する」という判決が出て、この判決は確定しました。戦争放棄を定めた憲法9条1項の判決は初めてでした。
 この論稿では、イラク戦争や憲法について詳細に言及されていますが、ここでは司法判断の意味、効果を中心に紹介させていただきます。

 イラクのサマワでの復興支援については政治やメディアで大々的に宣伝され広く知れ渡りました。しかし、航空自衛隊が武装した米兵を多数回イラク国内に輸送したことはほとんど知らされませんでした。判決がこの事実を詳細に適示し、国民の前に明らかにしたことは極めて多きな意義がありました。判決が出たこの年の末には自衛隊はイラクから完全撤退しました。判決が政治に与えた影響は大変大きかったといえます。また、翌年には、それまで非開示だった航空自衛隊の輸送活動が明らかにされました。

 この判決は欧米でも有名になり、2011年には、ヨーロッパの法律家たちが名古屋で「名古屋宣言」を採択しました。イラク派兵違憲判決は、2015年に「平和への権利宣言」を国連総会で採択しようという動きに続こうとしています。

著者は弁護士の川口創氏(名古屋第一法律事務)。「歴史地理教育」2013年3月1日号所収。