論稿「『発達障害』と刑事司法」第2回 筆者:H・O
2012年12月24日

 この論稿の第1回は以前紹介しました(こちら)。アスペルガー症候群の影響のある被告人に対して、求刑を上回る懲役刑を課した裁判員裁判についてです。
 この裁判の判決要旨では「社会内で被告の精神障害に対応できる受け皿が何ら用意されておらず、その見込みもないという現状下では、再犯の恐れが更に強く心配される」と述べられました。本当にその受け皿が用意されていないのか、その見込みもないのか。第2回のテーマは「“社会的受け皿”の整備はどこまで進んでいるか」で、「受け皿」の実態を示しながらの問題提起となっています。
 いま刑事施設(少年院や刑務所など)での受刑者の処遇は、その更生を重視したものへの改革が始まっています。また、新たに社会福祉法人が更生保護事業に参入したり、NPO法人が少年を対象とした更生保護事業を始めるなどの動きが生まれています。筆者の佐藤幹夫さんは、こうした施設の側の努力とそこへの支援によって、受刑者の更生への効果が上がることを強く期待します。
 佐藤さんは、裁判の判決にこうした「受け皿」の現状についての認識がまったく反映していないことを危惧します。裁判官にも、裁判員となる一般市民にも、精神障害・発達障害などを持つ人々へのサポートの現状についての認識とその重要性を広げ、適切な司法を実現していかなければならないと感じます。