論文「裁判員制度立法過程の検討序説
−裁判員制度の必要性はどう論議されたか」(その1)
筆者:H・O
2012年10月29日

 裁判員制度が何故必要とされるのか、ということが制度の立法過程でどう議論されてきたのかを検証する論文です。筆者の宮本康昭弁護士はこの論文で、裁判員制度に対する消極的な見解が少なからず聞かれる要因を解明しつつ、制度の必要性を説きます。
 宮本弁護士はまず、司法への国民参加をめぐる議論を戦前まで遡って探ります。戦前、陪審制度が導入されましたが、制度導入をすすめた中心的存在であった原敬氏の当時の主張などを紹介しています。
 その後陪審制度は停止となり、戦後改革の議論の中でも陪審制度は復活されませんでした。しかし、その検討の中では復活を求める強力な意見も多数述べられていました。宮本弁護士はこうした状況も明らかにしています。
 戦後、司法への国民参加の議論が広がったのは1980年代以降でした。いわゆる死刑再審事件が相次ぎ、陪審制度復活を求める主張や運動が繰り広げられました。そしてそれが1990年代の日弁連の主張ととりくみにつながっていきました。こうした経緯も綴られています。

 
【論文情報】
筆者は宮本康昭氏(弁護士)。渡辺洋三先生追悼論集『日本社会と法律学一歴史・現状・展望』(2009年、日本評論社)に所収。