報告「法教育と民主主義」 筆者:H・O
2012年7月23日

 日本国憲法によって国民主権を得た日本国民の多くが、そのための制度となる民主主義を高く評価します。そして、こんにち司法にも国民が参加するようになったことも歓迎されます。その方向性は正しいでしょう。ただ、国民は権力(当然、司法を含む)に参加することによって、その中に包摂される危険性もあります。権力を担う側には常にそのようにしていきたいという衝動があるでしょう。
 「法教育」という考え方と実践が広がりつつある中で、以上のような問題状況も踏まえながら、そのあり方を論じる報告です。
 報告は、憲法上の「国民」には「主権主体としての国民」と「人権主体としての国民」という、緊張関係にある二つの側面があるとの北川善英教授(横浜国大)の指摘を紹介しつつ、「法教育の内容を具体的に構成するためには、『人権主体としての国民』にとって必要な内容を基底に据えて、その上に『主権主体としての国民』にとって必要な内容を位置づけるという基本的な観点が不可欠なのである」という主張を紹介・提示します。そして、こうした点を踏まえつつ、民主主義教育を新たに発展させる課題を提起しています。
 憲法理念を正しく踏まえて法教育を発展させたいという問題意識を読み取ることができます。

 
【論文情報】
『民主主義教育21 vol.5 21世紀平和教育の新展開』(同時代社、2011年5月)に収載。筆者は吉田俊弘・筑波大学附属駒場中高等学校教諭)。