論文「違憲審査制 −日本の現状と課題」 筆者:H・O
2012年5月14日

 日本の裁判所は憲法判断に積極的ではなく、司法消極主義だといわれます。国民の権利を守るために裁判所が必要な憲法判断をするよう求めていくことも司法改革の重要な課題です。
 この論文は日本国憲法に規定された違憲審査制の内容、その考え方が歴史的にどのように確立し、解釈されてきたのかを整理しつつ、こんにちの裁判所が司法消極主義を採っている要因を分析しています。
 そして、違憲審査の活性化に向けた最近の学説の対応を紹介しています。たとえば、これまで最高裁は「法律上の争訟」の要件が充たされていないことを理由に違憲審査を回避する傾向がありましたが、これに対して「司法権の概念」そのものを再構成する必要性を説く学説が生まれてきているとのことです。また、いま法科大学院教育において、適用違憲の手法に注目が集まっているとして、個別事案の具体的事実との関係に着目した審査手法が重要であると提起しています。
 学会での議論の発展に期待したいと思います。

 
【論文紹介】
「法学セミナー」誌2012年5月号に所収。筆者は武田芳樹・山梨学院大学専任講師。