報告「わが国司法官僚制の現状と改革への道すじ」 筆者:H・O
2012年3月26日

 2011年10月、日本民主法律家協会は「『司法改革』10年 − 司法は国民のために役割を果たしているのか?」をテーマに司法制度研究集会を開催しました。この集会での宮本康昭さん(弁護士・元裁判官)の報告で、「法と民主主義」2011年11月号に収載されたものです。
 日本の裁判所は司法試験に合格した者を裁判官として採用することを基本とし、裁判官が最高裁判所を頂点とするヒエラルヒーに組み込まれ、「統制」されている、と言われます。裁判官の判決は必ずしも市民本位のものになっていないと指摘されますが、この司法官僚制がその大きな原因の一つであると、多くの専門家が分析します。
 1971年、宮本康昭さんは裁判官として再任されませんでした。それは前代未聞の事件として社会を驚かせました(この事件については当サイトでも紹介した講演録集『日本国憲法と裁判官』に収載された宮本さんの講演録でも証言されています)。宮本さんはその後弁護士として日弁連の司法制度改革のとりくみの中心メンバーとして活動されました。宮本さんは、そうした経験をふまえ、司法官僚制の改革を語っています。
 この報告では、司法制度改革審議会意見書(2001年)にもとづく改革で、裁判官の任用と裁判所運営の透明化は一定前進しているが、司法官僚制自体を打破していく課題はあまり進んでいないこと、弁護士経験者を裁判官に任用する法曹一元の実現を目指すとりくみが引き続き重要であること、などを説いています。また、司法の地方分権化についても唱えています。