論文「長沼訴訟自衛隊違憲判決と司法の危機 −福島重雄元裁判官と中学生との交流」 筆者:H・O
2012年3月5日

 中学校教員・滝口正樹さんの教育実践報告です。
 滝口さんは授業で長沼訴訟自衛隊違憲判決を取り上げました。長沼訴訟第一審での福島重雄裁判長による自衛隊違憲判決(1973年)は上級審で否定されましたが(ただ、自衛隊は合憲だとする判決が出されているわけではありません)、それはその後の裁判所の判断に大きな影響を及ぼしています。その判決は平賀書簡問題という裁判干渉に屈せずに出されたことでも知られます。
 滝口さんは、このページでも紹介した『長沼事件 平賀書簡35年目の証言』に記載された、福島さんの当時の日記などを生徒たちに紹介し、また福島裁判長が語る姿を報じたテレビ番組を見せました。そして、生徒たちが福島さんに手紙を書くことになりました。福島さんは生徒たちに返事の手紙を書きました。
 滝口さんはこうした授業実践を報告し、最後に福島さんから手紙をもらった生徒たちの感想を紹介しています。それは「福島さんのような真の裁判官を生み出すために必要なのは、難しい試験だけじゃない。それだけは計れない何かがあると思う」「きっと一生忘れられないだろうというほどに心に残ったのは、長沼訴訟で自衛隊違憲判決を下した福島重雄さんの話です。本当の良心とは何なのかに気づけた気がします」などでした。
 滝口さんのこのような教育実践が広がり、中学生たちにも司法をめぐる問題状況やそのあるべき姿を考えていって欲しいものです。

 
【論文情報】
「歴史地理教育」2012年3月号に収載。