書籍『量刑相場 −法の番人たちの暗黙のルール』 筆者:H・O
2012年2月20日

 裁判員制度が導入され、市民も裁判員としてプロの裁判官とともに重大な刑事事件の裁判に参加するようになりました。今般の司法制度改革の目玉の一つです。裁判員は被告人が有罪かどうかを判断するとともに、有罪とする場合の量刑も判断することになります。はたしてどのような基準で判断することになるのでしょうか。
 この本はいろいろな犯罪についての量刑の相場を明らかにしています。殺人の場合、傷害の場合、放火の場合、等々でその犯罪の態様などによって、これまでの量刑がどうなってきたのかを、その考え方も含めて紹介しています。これまで裁判所は、全体として刑罰に不公平感がでないように、バランスを考慮して量刑を決めてきたように見えますが、はたしてそう言いきれるのか、市民の感覚はここでも問われることになるでしょう。市民感情が入ることによって重罰化の傾向があると指摘されることがありますが、あらためて刑罰のあり方についての議論を広げていきたいものです。
 この本には実に多くの事件が類型化して紹介されていますが、たとえば、泥酔した同僚に手を焼き置いていったら、その同僚が電車に接触して死亡してしまった事件があります。同僚を残して帰ってしまった人は泥酔した者を保護しなかったとして、懲役1年6月となり、執行猶予もつきませんでした。このような量刑にはいろいろな意見があるように思われます。

 
【書籍情報】
2011年、幻冬舎から幻冬舎新書として刊行。著者は元裁判官で弁護士の森炎氏。定価は本体780円+税。

*法学館憲法研究所が開催した連続講座「日本国憲法と裁判官」で須藤繁・元裁判官は量刑の問題についても問題提起しました(2010年1月18日)。こちら。その講演録は『日本国憲法と裁判官 −戦後司法の証言とよりよき司法への提言』に収載されています。