書籍『弁護士 布施辰治』 筆者:H・O
2011年12月26日

 明治期に西洋の司法制度を参考にした日本の司法制度のできあがり、それは戦後の日本国憲法のもとで人権を重視したものに生まれ変わりました。その歴史の中でいろいろな法律家が語られますが、布施辰治(1880年〜1953年)は最も語り継がれることになる弁護士の一人になると思われます。その生涯と業績、人間性などを、孫にあたる大石進さん(元日本評論社会長)が著した書です。
 布施辰治は戦前から、無辜が罰せられてはならないと刑事弁護に力を注ぎ、数々の無罪判決を勝ちとりました。死刑を求刑される被告人の弁護にも並々ならぬ尽力をしました。また、社会的弱者の弁護も担当し、朝鮮人などの権利の実現に尽くしました。その活躍に韓国政府は2004年、故布施辰治に日本人初の建国勲章を授与しました。
 布施辰治は戦後、他の人権派弁護士とともに自由法曹団を設立し、その後三鷹事件の弁護団長も務めました。
 布施辰治は信念を曲げない性格ゆえに誤解されるところもあったようですが、弱者のためにとことん力を尽くした布施辰治の業績と思想は、法律家のあり方、司法のあり方を考える上で多くの示唆を与えてくれます。
 ドキュメンタリー映画「弁護士 布施辰治」が公開になった時期に刊行された書です。

 
【論文情報】
2010年3月、西田書店から刊行。価格:2300円(消費税込み 2415円)。著者は大石進さん(元日本評論社会長)。