書籍『市民と司法の架け橋を目指して −法テラスのスタッフ弁護士』 筆者:H・O
2011年4月18日
 弁護士は国家機関などから独立して業務にあたります。弁護士には在野精神が培われ、これまで社会的経済的弱者や刑事事件の被疑者・被告人のために尽くしてきました。
  一方、弁護士は自由業であり、公益的な弁護活動をするためには、一定の収益があがる仕事を確保することがその前提となります。弁護士も人の子であり、収益があがる仕事をもとめていくことになります。
  このような事情も背景となって、社会的経済的弱者や刑事事件の被疑者・被告人の権利擁護などを目的に、2006年、法テラスができました。法テラスの法律事務所は弁護士過疎地域にも開設され、そこに雇用されるスタッフ弁護士が配置され、活動が始まりました。スタッフ弁護士は法律扶助を活用し、弁護士としての収益確保を気にかけることなく、人々の法的ニーズに対応できます。
  法テラスは独立行政法人の枠組みで成り立っており、その制度は弁護士の在野精神を蝕んでいくのではないかとの危惧の声も聞かれ、注視する必要があるでしょう。ともあれ、スタッフ弁護士たちは実際にどのような仕事をしているのかを確認しておきたいと思います。本書にはスタッフ弁護士たちの「市民と司法の架け橋を目指して」奮闘する姿が綴られています。高齢者や障害者などが弁護士過疎地域で理不尽な状況におかれ、そこへの法的サポートの必要性・緊急性などが浮き彫りにされています。自分の身近なところに法律問題が山積していることを気づかせてくれる書でもあります。
 
【書籍情報】
現代人文社編集部・編。2010年12月、現代人文社から刊行。定価は本体1,600円+税。