書籍『裁判員になる前に知っておきたい 刑事裁判の裏側 −弁護人が語る刑事司法の現実』 筆者:H・O
2011年4月11日
 時折えん罪事件が報道され、警察はひどいと思うことはあっても、多くの人は、やはり悪人が逃げ得することのないよう警察や裁判所に期待し、基本的には信頼しているのではないでしょうか。
  たしかに警察や裁判所の仕事は大方きちんとなされているのでしょう。しかし、刑事裁判には市民が「知っておきたい」「裏側」があるのです。それを刑事事件にたずさわってきた弁護士が語る書です。
  罪を犯していないのに、いったん警察に睨まれ取調べが始まると犯行を認めるまで取調べが終わらない、なかなか釈放してもらえない、黙秘すれば反省していないと思われる、実際の言い分とは違う調書がつくられ署名させられる、裁判官もわかってくれない、わかってくれない弁護人もいる、等々のことが、実際にあった事件を紹介しながら綴られています。そして、そうした状況の問題点とその背景、本来のあり方などが、わかりやすく説明されています。市民が刑事裁判の裁判員になる時代にあたり、まさに「裁判員になる前に知っておきたい」ことです。
  防犯グッズを持っていたら軽犯罪法違反とされてしまったケース、他人の嘘の供述が証拠とされて有罪になってしまったケース、自分の彼女と仲良くなった親友を殴り、死んでしまったケース、等々実際にあった事件が紹介されています。市民がいつのまにか刑事事件に巻き込まれ、無実なのに罰せられる、あるいは不当な刑が科されることがある、ということをリアルに感じさせてくれるところも本書の特徴です。
 
【書籍情報】
現代人文社編集部・編。2010年12月、現代人文社から刊行。定価は本体1,600円+税。