公正な裁判への願い − 高知白バイ事件をたたかう(1)  
2012年2月13日
片岡晴彦さん(高知白バイ事件の裁判の再審請求人)

―――2006年、片岡さんが運転していた中学校のスクールバスと高知県警の白バイの衝突事故があり、片岡さんは無実を訴えましたが起訴され、裁判で有罪となりました。片岡さんは服役後、再審請求をしておられます。司法を国民本位のものにしていく上で、この裁判の経緯にはいろいろな問題点・教訓があると思います。
 さて、片岡さんが裁判というものに関わったのは、この事件が初めてだったのでしょうか?
(片岡さん)
 ハイ、初めてです。
 裁判所に入ったのも初めて、法廷に入ったのも、勿論初めてでした。その初めてづくしのなか、被告人席に座り、証人尋問を聞いたり、被告人尋問の時には、検察官から厳しく詰問されたりで、緊張しまくりでした。しかし、法廷では、真実を述べる場所なので、事故の事実は、はっきりと主張しました、私の関わった交通事故は、珍しいくらい目撃者が多く、法廷でも目撃証言を3人の方々(当時の中学校の校長先生、バスに乗車していました引率の教諭3人の中の一人、そして、全く面識のない第三者)に立っていただきました、。その方々も、勿論、真実を述べたのですが、判決文によると、「(その証言は)信用するに値しない」と言って一蹴されました。
 私は、裁判所では、最初に、嘘偽りを述べない旨、宣誓します。ところが嘘偽りを述べた、亡くなられた交通機動隊の同僚である証言者が裁判所から信用されて私は有罪を受けたのです。実刑判決は勿論不服でしたが、私は、自分の保身のために嘘ばかり述べ、反省する態度もない、情状酌量の余地なし、と評価されてしまい、考えもしなかった、予想もしていなかった、実刑判決を受けることになってしまったのです。私は、しばらくは信じられない、法廷の中で何が起きたのかわからないほど、放心状態でした。
 裁判官を信じ、目撃証言が絶対的だと信じて臨んだ裁判でした。しかし後で弁護士さんに聞いたのですが、やはり、員面調書、検面調書、いわゆる供述調書が今回の裁判では優先されました。法廷での、真実を述べた証言は全て却下されたわけです。
 勿論、第一審の判決に対して私は即日控訴、高裁に向けて、事故解析人の先生を捜し、色々な方々から紹介していただき、素晴らしい先生に行き当たりました。当時のバスを借し切り、走行実験を何度も繰り返し、DVDに記録し、証拠物件、解析書をとりまとめ、そして、当時バスに乗っていた生徒の一人が、どうしても納得がいかないと証言台に立ってくれました。私の無実を晴らしたいという、彼の勇気ある陳述書も裁判所に提出しました。こうして私は準備万端、自信を持って高裁に臨みましたが、即日結審、一審を支持し、控訴棄却となってしまいました。私はどうしても納得がいかないので最高裁に上告しましたが半年余りたったのちに、上告棄却となってしまいました。
 私が裁判を実際に経験して初めて分かったことは、法廷でいくら事実を言っても、真実を述べても聞き入れてくれない場所だということでした。憲法には、国民は、裁判を受ける権利がある、と謳われています。大変すばらしい言葉ですが、形だけで、本当の世界ではありません、虚構の世界です。

―――片岡さんは、弁護士とかかわったのはもこの事件で初めてだったのですか?
(片岡さん)
 ハイ、初めてです。私は警察から疑われ始めた時期にいくつかの法律事務所を尋ね、弁護士と相談することになりましたが、当初はなかなか私の訴えをあまり理解していただけない状況でした。

―――裁判に際しては信頼できる弁護士にも出会ったそうですね。
(片岡さん)
 私はこの事件で、裁判になる前に免許取消の行政処分を受けました。運転手の私が免許を取り消されたら生活できません。異議申立ては60日以内とのことですので、弁護士を探し始めたのです。そのうちに、私の住んでいる仁淀村出身の弁護士が、高知で事務所を開いている事を聞き、元村会議員だった兄が連絡を取ってくれ、選任手続きを取り付けたわけです。その弁護士が、刑事裁判の弁護をしてくれました。結果的に、私は裁判所から有罪判決を下されたわけですが、その弁護士には真剣に取り組んでいただき、私の家にもたびたび足を運んでくれ、地元の方々に応援してやってくださいと呼びかけてくれたりと、まじめ一筋、一生懸命にやってくれたと思います。

<つづく>
【編集部から】
*片岡晴彦さんを支援する会のホームページはこちら
*当ページに以前、大野耕さん(片岡晴彦さんを支援する会副会長)の下記の論稿を掲載しました。
「高知白バイ事件とその裁判(その1)
「高知白バイ事件とその裁判(その2)