証拠調べ  
2010年5月31日
 証拠による犯罪事実の認定は刑事裁判の中心であり、最も重要な部分です。
刑事裁判では検察官が公訴事実の立証責任を負うので、まず検察側が冒頭陳述で証拠により証明すべき事実を明らかにし、証拠の標目を示して証拠調べの請求を行います。これに対し、弁護側の立証活動は検察官の立証に合理的な疑いを生じさせることを目的としており、冒頭陳述をするかどうかは任意です。ただし、裁判員裁判では、検察官が冒頭陳述で描く事件に対して弁護人がどのように事件を描くかを裁判員に明示するため、弁護人も冒頭陳述と証拠調べ請求を行います。
証拠調べ請求に当たっては、証人、鑑定人等の人証はあらかじめその氏名・住所を明らかにしなければならず、書証は事前に開示する必要があります。証拠調べ請求を受けて、裁判所は何を証拠として調べるか決定しますが、書証についてはすでに別項で述べた伝聞法則等の問題があります。また、被告人の自白調書は、自白に補強証拠を必要とした憲法の趣旨から、犯罪事実に関する他の証拠が取り調べられた後でなければ請求できません(刑訴301条)。
裁判員裁判では、公判前整理手続で事件の争点と提出証拠が全て明らかにされ、証拠調べの順序と方法も決められるため、短期間で集中して証拠調べを行うことが可能になります。