控訴  
2010年3月29日
 控訴とは第一審の判決に対する不服申立て(上訴)であり、刑事裁判では通常は高裁が控訴審となります。控訴は被告人、弁護人、検察官のいずれもができます。
控訴理由の主なものは事実誤認と量刑不当です。そして、原則として、これらは第一審で取り調べられた証拠に現れている事実を援用しなければならないとされます(刑事訴訟法381条、382条)。それゆえに、控訴審の構造は「事後審」であるといわれます。
しかし、他方、「やむを得ない事由によって」第一審で証拠請求できなかった新証拠の提出は可能であり、また、第一審の弁論終結後判決前に生じた事実についても同様です(382条の2)。さらに、第一審判決後に被害者と示談が成立した場合などは、「刑の量定に影響を及ぼす情状」として裁判所は職権で取り調べることができます(393条2項)。これらの例外は比較的緩やかに認められているため、控訴審は運用上「覆審化」しているともいわれます。冤罪防止のためには被告人に有利な新証拠は幅広く認めるべきだといえそうですが、検察官控訴の場合には不利な新証拠が提出される危険もあります。
裁判員裁判についても同様に控訴は可能です。しかし、控訴審は裁判員裁判ではないため、職業裁判官が裁判員裁判の結果を覆す可能性があるわけです。この点について最高裁は、裁判員裁判の結果を「できるだけ尊重すべきだ」と考えているようです。また、裁判員裁判では公判前整理手続で証拠請求がすべてなされ、充実した審理が期待されるため、控訴審での新証拠の提出についてはより厳格な運用が必要でしょう。