通貨偽造罪  
2010年3月1日
 刑法148条1項は「行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又は三年以上の懲役に処する」と定めています。これらの偽造された通貨を行使等した者も同じです(同条2項)。
通貨偽造罪は、通貨に対する社会の信用を害し、社会経済を混乱に陥れる重大な犯罪であり、法定刑も極めて重くなっています。未遂罪(151条)と予備罪(153条)も処罰されます。
「偽造」とは本物の通貨と誤信させる外観のものを造ることであり、その程度に達しない者は「模造」としてより軽い処罰の対象となります。
この罪の成立には偽造通貨を流通させる「行使の目的」が必要であり、教材やサンプル作成の目的は除外されます。また、自己の信用を示すために偽造通貨を見せるだけで流通させる目的がなければ、通貨偽造罪にはなりません。
他方、「行使の目的」があれば、偽造通貨を行使する罪(同条2項)、収得する罪(150条)、収得後に偽造と知って行使する罪(152条)、さらには外国通貨を偽造・行使等する罪(149条)も関連犯罪として処罰されます。
通貨偽造罪はかつては印刷機器等を使用した大がかりな組織的犯罪でしたが、現在ではスキャナーやカラープリンターを使って容易に紙幣の複製ができ、犯罪の機会が広がっています。