裁判員の守秘義務  
2009年12月14日
 現に裁判員、補充裁判員である場合、および元それらの職にあった者は、次の二つの点について守秘義務を負うことになっています(裁判員法9条2項、10条4項)。(1)評議の秘密。(2)職務上知り得た秘密。評議の秘密には、評議の経過、それぞれの裁判官・裁判員の意見およびその多少の数が含まれます(同法70条1項)。
この義務に違反した場合には、現に裁判員等の職にあるときには解任事由になり(同法41条1項4号、5号)、刑罰を科されることもあります(同法108条)。罰則は、現に裁判員等の職にあるときに(1)または(2)を漏らしたときには、6月以下の懲役または50万円以下の罰金です(同条1項)。元裁判員等の場合には、(1)または(2)のうち裁判官・裁判員の意見およびその多少の数を漏らしたときに同様に処罰されます(同条2項1、2号)。評議の経過については、財産上の利益その他の利益を得る目的で漏らした場合には、同様に処罰されますが(同条同項3号)、財産上の利益等を得る目的でなければ50万円以下の罰金を科されることになります(同条3項)。
この守秘義務の(1)はともかく、(2)について、罰則を科してこの義務を規定することには、制定過程から強い疑問が提起されてきました。裁判員等を被告人等の非難・攻撃から守るためとも説明されます。しかし、抽象的な危険を理由に、不明確で幅広くならざるを得ない義務を課すことで裁判員等に過度の心理的負担を強いるだけでなく、公正な評議をも危うくするとの強い批判があります。3年後の見直しの第1の課題の一つでしょう。