起訴  
2009年11月2日
 特定の刑事事件について、裁判所に対して有罪か無罪の判決を求めて訴えを提起することです。わが国では、起訴は、「公の訴え」ということで、最近までは、国家機関である検察官だけが、唯一、権限を与えられており、刑事訴訟法上も「公訴」と規定されています(247条)。また、訴え責任を追及するといった意味から、「訴追」という用語も同じ意味で使われることがあります。国家機関である検察官だけが起訴権限を有する制度を、国家訴追主義といい、犯罪の被害者などが起訴権限を持っている私人訴追主義や一般の市民が起訴権限を持っている公衆訴追主義と区別されます。また、わが国の検察官の権限は、証拠がそろっていても事情によっては起訴しない(不起訴)ことができる、起訴便宜主義という方式の強力な権限になっています(248条)。そのため、検察官の不起訴処分が、適正に行使されたかどうかを審査し、検察官の公訴提起に変わる効果を生む制度を二つ設けています。一つは、一定の公務員の犯した犯罪行為について、検察官が起訴しなかった場合に、直接裁判所に審判(裁判)に付することを請求することができる付審判制度です(刑事訴訟法262条以下)。この制度は、起訴に準じる効果を認めるという意味で、準起訴制度とも呼ばれますが、裁判所が、審判に付する理由があるという決定を行ったときには、公訴提起が擬制され、裁判所が指定する弁護士が公訴の維持にあたることになります。二つめは、既に60年の歴史を持つ国民参加制度である検察審査会です(検察審査会法参照)。公職選挙人名簿から無作為で選ばれた11人の国民が、検察官の不起訴処分の当否を審査し、8人以上の賛成があれば、検察官に起訴を求める「起訴相当」という議決をすることができます。従前、この議決には法的拘束力がありませんでしたが、2009年5月21日から施行された法改正により、次のような場合に法的拘束力が与えられることになりました。それは、「起訴相当」の議決を受けた後に検察官が公訴を提起しなかった場合に、再度、検察審査会が「起訴相当」の議決をした場合です。その場合には、裁判所の指定した弁護士が、公訴の提起、維持にあたることになります。