情状酌量  
2009年9月28日
 わが国の刑法は、特定の犯罪(例えば殺人)について定めている刑(法定刑)の幅が、非常に広くなっています(殺人の場合、5年〜20年(例外的に30年の場合があります。)の懲役、無期懲役、死刑が選択できることになっています(刑法199条))。その幅の中で、有罪と判断された事件の被告人に対し、どのような刑を言い渡すかを決めるのが、「量刑」といわれるものです。そして、量刑の判断要素となるさまざまな事情が、「情状」といわれます。
情状には、犯行の動機・目的、手段・方法・態様、被害の軽重といった犯罪事実自体に関わるものと、被告人の年齢、前科、反省の状況や、被害弁償・謝罪の有無、被害者側の事情などの関連する諸事情が含まれます。「情状酌量」は、一般的な用法としては、量刑に当たって、これらの情状を酌んで法律で定められた刑期の範囲内で刑を比較的軽くしたり、懲役・罰金などの場合に執行猶予(直ちに刑に服さず、執行猶予期間(1年〜5年)中に新たな罪を犯したりしなければ、刑に服さなくてよくなること)を付したりすることを指す、といっていいでしょう(ただし、懲役の場合、執行猶予を付すことができるのは、3年以下の刑を言い渡す場合に限られます。)。
これに対し、法律上の「情状酌量」を規定しているのが、刑法66条です。「犯罪の情状に酌量すべきものがあるときは、その刑を減軽することができる。」とされ、この規定によって、本来の法定刑の下限よりも更に軽い刑を言い渡すことができることになります。とはいっても、無制限に軽くすることはできず、有期の懲役刑の場合、下限は、本来の法定刑の下限の2分の1までということになっています(刑法71条、68条3号)。例えば、殺人の場合、法律上の情状酌量による減軽を行なうと、もっとも軽くて2年6か月の刑を言い渡すことができるということになります。