論稿「犯罪被害者等及び証人の支援・保護の方策」 筆者:T・S
2015年1月19日
 「法制審議会 ― 新時代の刑事司法制度特別部会」で検討された課題のうち、犯罪被害者等及び証人の支援・保護の方策についての水谷規男・大阪大学教授の論稿です。
 この被害者、証人保護の方策は、特別部会への諮問事項にはありませんでしたが、特別部会に被害者団体から委員が選ばれたことにより検討課題になりました。
 論稿は、この問題についての特別部会の議論、「時代に即した新たな刑事司法制度の基本構想」(2013年1月)、証人保護に関する分科会、特別部会「事務当局試案」(2014年4月)にいたる経緯をたどります。そして、「事務当局試案」における証人保護制度の具体的内容を解説しています。
 水谷教授は「事務当局試案」に関して、「犯罪被害者のニーズを満たすという観点と冤罪防止の観点が調和し得るのかどうか、という根本的議論」を欠いたものと指摘しています。そして、「被害者側の意見は特別部会の機会を利用して権限を拡張しようとする警察、検察の立場を後押しするものとさえなっている」と批判しています。
 国家の刑事罰権行使に対する個人の権利保障の確立が第一義的目的であるはずの刑事司法改革が、被疑者・被告人の権利保障の制限の方向に進むことに警鐘を発する論稿です。

 この論稿は『刑事司法改革とは何か 法制審議会特別部会「要綱」の批判的検討』(2014年9月、現代人文社)に収載されています。