鼎談・論稿「刑事免責制度と被告人の証人適格」 筆者:T・S
2014年12月15日
 法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」から発表された「時代に即した新たな刑事司法制度の基本構想」(2013年1月)と「事務当局試案」(2014年4月)などから、刑事免責制度と被告人の証人適格に関する司法改革問題を論じた鼎談と論稿です。
 まずは、2013年10月の時点での福島至・龍谷大学教授、神洋明弁護士、高田昭正・立命館大学教授(司会)の鼎談です。
 ここでは、「基本構想」までの議論の経緯や刑事免責制度の問題点、その必要性・有効性、黙秘権問題、弁護権など議論がありました。そのなかで、「基本構想」が被告人の防御権の強化の方向でなく、捜査権限や訴追権限強化の方向になってしまっているとの指摘もあります。
 論稿では、高田教授が、共犯者の刑事免責制度は、共犯者の供述により被告人を誤判に導く恐れが強まることなどから反対し、被告人の真実供述義務に関しても、被告人の黙秘権が保障されず、被告人の当事者的地位を損なうと指摘しています。
 また、取調べ偏重の刑事手続き改革であるべきものが、特別部会などでの検討が捜査機関の都合がよい方向に向かい、弁護人の立会いなどが置き去りにされているとして、改革のビジョン自体の練り直しを提言しています。

 この論稿は『刑事司法改革とは何か 法制審議会特別部会「要綱」の批判的検討』(2014年9月、現代人文社)に収載されています。