鼎談・論稿「通信・会話の傍受(盗聴)」 筆者:T・S
2014年12月8日
 「法制審議会 ― 新時代の刑事司法制度特別部会」に提出された「事務当局試案」(2014年4月)やその前の「作業分科会における検討(1)」(2013年6月)に、通信・会話の傍受(盗聴)という捜査手法の拡充が提案されました。このことについての鼎談と論稿です。
 まずは、2013年9月の時点での三島聡・大阪市立大学教授、山下幸夫弁護士、川崎英明・関西学院大学教授(司会)の鼎談です。
 ここでは、通信・会話の傍受(盗聴)に関して、特別部会や作業部会での議論が「制度を作ることが前提」となっていることへの批判意見などが出されました。そして、法律で通信傍受という捜査手法を拡大するのであれば、それが人権侵害をもたらさないような制度にすべきことが議論されました。
 論稿は、川崎教授が、通信・会話の傍受(盗聴)に関する特別部会や作業分科会での審議の論点やその推移をたどりながら、議論がまとまらず、最終的に事務当局に「試案」作成が委ねられた経緯を解説しています。そして、その「事務当局試案」を分析し、通信傍受(盗聴)の対象犯罪を大幅に拡大したことなどは反憲法的だと批判しています。また、その後の2014年7月に特別部会で採択された「新たな刑事司法制度の構築についての調査審議の結果」での取りまとめも、それと本質的問題点は変わらないと批判しています。

 この論稿は『刑事司法改革とは何か 法制審議会特別部会「要綱」の批判的検討』(2014年9月、現代人文社)に収載されています。