書籍『再審無罪 −東電OL事件 DNAが暴いた闇』(その2) 筆者:H・O
2014年7月21日
 
前回からの続き>

 読売新聞がその後もこの事件の再審請求審を追い続けたことは当然です。そして、2012年、ゴビンダさんの再審開始と刑の執行停止が決定し、同年無罪が確定しました。
 本書はDNA鑑定結果など事件に関わる事実を検察官や裁判官などがどう評価し認定するのか、それをどう裁判の結論に結びつけるのかをめぐる当人たちの思考と苦悩なども炙り出しています。そして、検察官が有している関係証拠があまり開示されないことが公正な司法を阻害しているという問題点を指摘しています。
 司法に迫る新聞記者たちのプロ意識と執念が伝わってきます。その記者たちの背景には、真実を知りたいという無数の国民の新聞への期待があります。国民の関心とメディアの仕事が司法を動かしている、ということを感じさせてくれる本です。司法の改革を考える上で、お薦めしたいと思います。
 
【書籍情報】
2014年6月、中央公論新社から中公文庫として刊行。著者は読売新聞社会部。定価は本体700円(税別)。