書籍『再審無罪 −東電OL事件 DNAが暴いた闇』(その1) 筆者:H・O
2014年7月14日
 
 1997年に発生した東京電力女性社員殺害事件の再審請求審を追い、検証する本で、新聞記者の目で司法が抱える問題点や課題を炙り出しています。
 この事件ではネパール人・ゴビンダさんが犯人だとされ、逮捕・起訴されました。ゴビンダさんは一審で無罪になりましたが、二審で有罪となり、刑が確定しました。そして、その後再審請求しました。
 この裁判・再審請求審はDNA鑑定の技術が大きく進歩している時期にすすめられ、被害者などから検出されたもののDNA鑑定の結果が裁判所の審理にも大きな影響を及ぼしました。しかし、その鑑定結果を審理においてどう評価するかは手探り状態でもありました。そのような状況の中で、2011年、読売新聞は再審が開始される可能性を伝えるスクープを、他社に先駆けて記事にしました。
 読売新聞のスクープは大きな反響を呼ぶとともに、担当する検察官たちにも衝撃を与えました。読売新聞の記者たちは事件と裁判の経緯、DNA鑑定とその評価などについて、執念をもって関係者に取材し、その上で記事の掲載を決断しました。後に誤報として批判されるかもしれないことを覚悟してでのことでした。

<続く>
 
【書籍情報】
2014年6月、中央公論新社から中公文庫として刊行。著者は読売新聞社会部。定価は本体700円(税別)。