書籍『レクチャー日本の司法』(その5) 筆者:H・O
2014年5月19日
 
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 本書は第12章で刑事裁判の目的・役割を、第13章で刑事裁判の流れを、第14章で刑事司法のトピックスを説明しています。
 多くの国民は犯罪者には刑罰を科すことによって安全に生活することを願い、刑事裁判にもそのような期待を抱いていると思われます。しかし、刑事裁判の中心の目的をそのように理解することは、逆に国民の自由な生活を脅かすことになります。第12章ではその意味を丁寧に解き明かしています。
 第13章の刑事裁判の流れは、櫻井昌司さん・杉山卓男さんが再審で無期懲役の刑を覆して無罪となった、布川事件の例を示しながら、実際の実務とそこにある問題点を解説していますので、それを具体的にイメージしやすくなっています。ここでは、再審の制度についても説明しています。
 第14章では、少年犯罪の問題、犯罪被害者の救済、死刑制度、取調べの可視化と捜査過程の記録について解説しています。
 本書の第15章は憲法訴訟、行政訴訟の制度とその考え方、実際の裁判の現状などを説明し、政策形成や公共的利益の実現に果たしている裁判の役割と課題などを提起しています。
 
【書籍情報】
2014年2月、法律文化社から刊行。編者は川嶋四郎・同志社大教授と松宮孝明・立命館大教授。定価は本体2,500円+税。