『絶望の裁判所』(その2) 筆者:H・O
2014年3月10日
 
前回からの続き>

 第3章では、こんにち裁判官は、最高裁のいうような裁判をしなければならない、あるいはその統制に従わなければならない、そのような状況にあることを明らかにします。裁判官はいわば最高裁事務総局の支配・統制という「檻」の中の「囚人」だと表現しています。
 第4章では、そのような裁判官たちによる裁判の問題点を指摘し、日本の裁判所は「あなたの権利と自由を守らない」と断じています。具体的には、民事裁判で裁判官が当事者に対して和解を強要することが横行し、真に当事者のためになる救済がはかられていない状況などを指摘します。
 この章では、裁判官は一般に言われるほどには多忙ではない、ということも指摘しており、注目されます。
 第5章では、少なくない裁判官の心はゆがんでいるとして、その深刻な実態を紹介しています。
 第6章は、こうした裁判所を改革していく課題が述べられています。それは、前述のような裁判所の状況から、もはや「絶望の裁判所」の内からの改革は無理であるとして、ある程度経験を経た弁護士等の中から裁判官を選任する法曹一元制度を実現させることが必要という内容になっています。著者である瀬木・元裁判官には法曹一元制度を実際に導入していく具体的展望についても、いつか語っていただくことを期待したいと思います。
 
【書籍情報】
2014年2月、講談社から講談社現代新書として刊行。著者は瀬木比呂志氏(元裁判官、現在明治大学法科大学院教授。定価は本体760円+税。