書籍『裁判官の品格』(その2) 筆者:H・O
2014年2月24日
 
前回からの続き>

 本書は「裁判官には当たり外れがある」ことを明らかにします。裁判では証拠にもとづいて事実の認定が行われ、それに法律を適用して判断が下されることになります。また、刑事裁判では「疑わしきは被告人の利益に」という鉄則が適用されなければなりません。したがって、基本的には誰が裁判官であっても結論はそう変わるはずがないように思われます。ところが、少なくない裁判官が刑事裁判における「疑わしきは被告人の利益に」という鉄則に則らない判断をしている、ということを本書は明らかにしています。同時に、少数ながらも刑事裁判の原則に忠実な裁判官がいることも示し、したがって、「裁判官には当たり外れがある」、としています。
 本書では、刑事裁判の原則に忠実な裁判官が、なぜか特定に事件においては首を捻らざるをえない判断をしている例も紹介しています。その裁判官が明かすことがなければその真相はわかりませんが、どうしてなのかの分析は重要であるように思われます。そのことにも関連するところがあると思われますが、合議制の裁判での他の裁判官との合議がどのようになっているのかも、もう少し知りたいところです。そんなことも本書を読んで考えさせられました。
 
【書籍情報】
2013年11月、現代人文社から刊行。著者はジャーナリスト・池添徳明さん。定価は本体1,700円+税。
 
*以前、この本の著者・池添さんに当サイトで「裁判所・裁判官を市民が監視する」と語っていただきました。ご案内します。