論稿「51年目の新証拠 −狭山事件」 筆者:H・O
2014年2月10日
 
 取調べの際に被告人に有利な証拠が見つかったとしても、ほとんどの場合、検察官はそれを被告人や弁護人に開示しません。裁判員裁判においては開示が進みつつありますが、それは刑事事件全体には及んでいません。証拠開示の制度化はえん罪防止のための最重要課題の一つだと言えるでしょう。
 この論稿は狭山事件の再審請求にあたって、事件から51年目に明らかになった新証拠のことを素材に、証拠開示の必要性を説くものです。狭山事件の犯行に使われた手ぬぐいはそう多く出回っていたものではなく、持っていた人は大方特定されます。検察はこの事件で使われた手ぬぐいは、この事件の犯人だとした石川一雄さんが入手したものだと認定したのですが、新証拠からはその認定には無理があることが明らかになっています。この論稿はそのことを丹念に論証し、こうした証拠を検察がずっと隠していたことは許されないことだと指摘しています。
 無実を訴える人がこのようにして裁判で有罪だとされている事実に目を向けなければならないと思います。
 この論稿は雑誌「世界」2014年1月号(岩波書店)に収載されています。筆者はジャーナリストの菅野良司さんです。
 
*狭山事件に関わっては当サイト内に下記の情報があります。
  「『みえない手錠をはずすまで』−狭山事件を伝える(その1)」金聖雄さん
  「『みえない手錠をはずすまで』−狭山事件を伝える(その2)」金聖雄さん
  「みえない手錠をはずすまで −映画『SAYAMA』」