論文「『新時代の刑事司法制度』特別部会に対する批判的検討」(その2) 筆者:H・O
2014年2月3日
 
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 法務省・法制審議会の「新時代の刑事司法制度特別部会」が2013年にとりまとめた「基本構想」は取調べの可視化は対象事件を限定したうえで取調べ官の裁量に委ねる案などを提示するという、当初の検討より後退するものとなっています(前回を参照してください)。
 同時に、看過できないこととして、刑の減免制度の導入、被告人の虚偽供述処罰制度の導入、通信傍受制度の拡大などの提案があります。
 渕野教授はこれらが提案されている理由の示しながら、それぞれの施策の問題点を明らかにします。刑の減免制度は、他人の犯罪事実を明らかにすれば自分の刑事責任を減じられる制度で、その制度化は犯罪にまったく関係ない人に責任を押し付けることにもなりかねません。被告人が虚偽の供述をすることは許されないと思われがちですが、被告人には憲法で黙秘権を保障されていることの趣旨とその制度が整合するのかどうか、実際の裁判の手続きに照らして吟味されなければならないでしょう。通信傍受の拡大は人々のプライバシーや捜査の適正手続きを侵害することが懸念されます。
 これらについて国民の監視を怠ってはならないでしょう。
 この論文は「法と民主主義」誌2013年12月号に収載されています。