論文「誤判に学ぶ国の司法、学ばない国の司法」 筆者:H・O
2014年1月20日
 
 指宿信・成城大学教授の論文です。「ノースカロライナ州の刑事司法改革を通して考える」というサブタイトルがついています。
 2002年、アメリカ・ノースカロライナ州最高裁長官が誤判原因を探り再発防止の施策をまとめる組織の設立を呼びかけ、そのための委員会が創設されました。この委員会は裁判官、弁護士、検事、警察関係、被害者団体、えん罪NPOによって構成されることになりました。この委員会は、多くの誤判原因となっていた目撃証言についての対策、同房者証言の規制や取調べの録画義務化、検察官手持ち証拠の開示などとともに、えん罪を主張する受刑者からの訴えを審査する専門機関の設立などについての提言・勧告をしました。これらの提言・勧告を受け、ノースカロライナ州で全面的な証拠開示、えん罪審査委員会の創設が実現し、目撃証言改革法・殺人事件における取調べ録画義務化法・科学的生体証拠の保存と被告人からのアクセス保障法が議会を通過しました。
 この論文は、こうした改革の経過を明らかにしています。そして、ノースカロライナ州をはじめとするアメリカ諸州での改革に照らしながら、現在の日本の法制審議会での刑事司法改革の議論の不十分さ・問題点を厳しく指摘しています。
 この論文は雑誌「世界」2014年1月号(岩波書店)に収載されています。