書籍『司法権力の内幕』 筆者:H・O
2013年12月23日
 
 冤罪、誤判をはじめとする裁判官の不条理な判断は、裁判官が、基本的に、自ら裁判所の規律や権力に服していることの帰結である。元裁判官である森炎さんがこのように主張する本です。
 森さんは、裁判官はもはや主体的な判断はできない、前例や裁判所の慣例に従うのみ、という状況になっていると、様々な例を紹介しながら主張します。そうでない例は例外に他ならないとの立場は徹底しています。そして、裁判員制度による市民の司法参加は、この状況を打破していく場にしなければならないと説きます。
 果たして、そのような裁判官についての認識は妥当なのでしょうか。そうではない裁判官も少なからずいるのではないでしょうか。最高裁が個々の裁判官をどのように認識し、どのような管理や人事をしようとしているのかにも注目すべき、との批判もありそうです。しかし、裁判官をめぐる状況を鋭く分析しているとの評価もあるかもしれません。
 裁判官の置かれた状況、意識を知ることは、司法を市民本位のものにしていく上で重要なことです。その一助になる本です。
 
【書籍情報】
2013年12月、ちくま新書として刊行。著者は元裁判官である森炎(もり・ほのお)さん。定価は本体760円+税。