論文「災害に対応しうる法、司法、法学のあり方 − 東日本大震災を通じて」 筆者:H・O
2013年11月4日
 東日本大震災に対応した「法」「司法」「法学」をトータルに概観し、その課題を提起する、弘前大学・飯孝行准教授の論文です。この論文の中で、「司法」に関わっては、被災者の法律相談の状況などについて分析しています。
 東日本大震災の後1年半の間、被害地域において日弁連および各地の弁護士会、弁護士有志による法律相談は4万件にのぼりました。しかしこの論文は、その数は決して多いとはいえないとし、その要因を分析しています。それは、いくつかの被災地域での各種調査結果を示しながら、被災者が法律相談を躊躇ったのは、やはり「費用が高い」「敷居が高い」などと被災者が考えていたということです。
 この論文は被災者が重大な問題だと考えていたこととして「自治体による土地の買い上げ」「住宅ローン」「土地・建物の売買・建築」「解雇・雇い止め」「相続・遺言」「地震保険の保険金請求」などを紹介し、いずれも弁護士が相談にのることでより有利な解決に至る可能性があった案件だと思われることを示唆しつつ、司法アクセス改善の課題を提起しています。
 この論文は民主主義科学者協会法律部会編『東日本大震災・福島原発事故と法』(2013年、日本評論社)に収載されています。